レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

「スパイ・バウンド」フランス製エスピオナージスリラーですが・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「スパイ・バウンド」(2004)です。

 

この作品は、1985年ニュージーランド、オークランドでフランスの対外治安機関DGSEによるグリーンピース活動船虹の戦士号が爆破された事件をベースにしたスパイ・アクションです。監督は、独特なグロいセンスを持つフレデリック・シェンデルフェール。但し、その独特なグロさは殆どありませんが。

ジョルジュ(ヴァンサン・カッセル)とリサ(モニカ・ベルッチ)と夫婦を装って、モロッコ、カサブランカに入国する。目的は武器密輸船アニタ・ハンス号を爆破する為に。

が、作戦準備中にCIAを名乗る男から中止する要請されるが、実行する。作戦は成功し、二人は欧州に戻るが、リサは麻薬密輸で警察に拘束され、先に戻った仲間も殺されて・・・・

 

007シリーズのような派手さはありませんが、又ル・カレ映画のような落ち着いたエスピオナージスリラーでもなく、商売的には難しいところだと思います。ただ、この手の映画が好きな人は、楽しめる一編になっています。

何せ後半ヴァンサン・カッセルは格好いいし、結構見せ場がありますが、モニカ・ベルッチはもう少し見せ場が欲しいと思います。

 

この監督、独特の映像センスがあり、例えば、モニカとヴァンサンが、夕陽のカサブランカの海を泳ぐシーン、もっともっとプラスの方向に成長して欲しいと思いますが、それは、本格的なフィルムノワール次作 「裏切りの闇で眠れ」の紹介時にしたいと思います。

 

ブログ作成にDVD版を鑑賞しています。                 八点鍾

 

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番外編「美しき諍い女」のミッシェル・ピコリさん追悼

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。「汚れた血」「美しき諍い女」で有名なミッシェル・ピコリさんが亡くなりました。謹んで追悼いたします。

 

ピコリさんのキャリアは、戦後から始まり、ヌーベルバーグから最近まで活躍しており、メルヴィル監督「いぬ」、ゴダール監督「軽蔑」、ブルニェル監督「昼顔」、ガブラス監督「奇襲戦隊」、ヴァデム監督「獲物の分け前」、ヒチコック監督「トパーズ」、ソーテ監督「夕なぎ」、ドミー監督「ロシュフォールの恋人」、レネ監督「戦争は終わった」等素晴らしい監督たちと仕事をしています。

でも、私は何故か「恋の病」(1987)という彼の映画が好きなのでこの作品を紹介したいと思います。監督はジャック・ドレー。

 

この作品は、ナスターシャ・キンスキー、ジャン=ユーグ・アングラードと共演したラブロマンス映画です。淡々と一番綺麗な時のキンスキーとアングラードのロマンスを描いた映画なんですが、冒頭、ピコリ演じるラウル医師が自分の行きつけの美容院の美容師ジュリエット(ナスターシャ・キンスキー)と夜、偶然に会うシーンがあります。彼はルノー5という小型車に乗っています。いい車の趣味しています。あっという間に彼の別宅にジュリエットは連れていかれ、一夜を共にします。

朝、ジュリエットが起きて来ると、彼は彼女に鍵を渡して、「これ、この家の鍵、」と言います。フランス人の恋愛観を見ているようですが、彼のその時の仕草が何とも良いんです。ほんと、上手い役者だなと思います。日本人でこれを演じれる人は、なかなかいないでしょう。ただのエロ親父になってしまいます。

 

彼のようなとても上手い役者がいなくなるのは、大変残念なことです。  八点鍾

 

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「ワルキューレ」ヒトラー暗殺を描いた問題作、クーデター成功の難しさ・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ワルキューレ」(2008)です。

 

この映画は1944年7月20日に起こったヒトラー暗殺事件を描いた映画です。ヒトラー暗殺を扱った映画、例えば「将軍たちの夜」「ヨーロッパの解放第二部」等がありますが、何れも一エピソードとして扱われており、暗殺事件のみを扱った映画で日本で公開されたのはこの作品が最初だと思います。

 

スパースター、トム・クルーズがシュタウフェンベルグ大佐を演じる大作なので、映画の隅々まで時代考証が行き届いており、例えば冒頭のJu-52輸送機とBf109戦闘機のシーン等素晴らしいの一言。アフリカ軍団のⅣ号戦車、将官、佐官クラスの軍服、軍事車両、首都ベルリン、"狼の巣"を守っている防虫網を被った警備兵など大変良く出来ています。監督は「ボヘミアン・ラプソデイ」のブライアン・シンガー。

 

映画は1943年のヒトラー暗殺未遂事件から1944年7月20日の暗殺事件と、その顛末を手際よくさばいており大変勉強になります。このクーデター失敗の最大要因は、あくまでもこのハリウッド映画から分析すれば、暗殺用爆弾を1個しか使用しなかったこととオルブリヒト将軍の優柔不断さでしょう。

ヒトラー側から見れば、通常のようにコンクリート製の作戦室で会議を行っていたら爆発の衝撃で、ヒトラーは間違いなく即死だったと思いますが、たまたま暑かったので外の作戦室で会議を行ったこと。

 

が、ゲッペルスが後に語っているように、放送局を占拠して、"狼の巣"を孤立させて、えげつなくヒトラー偽情報を流し続けて応戦すれば・・・

いずれにしても、日本でも226事件、815宮城事件が起きていますが、何れも失敗しています。

 

最近は、この様な武力クーデターは主流ではなく、チリアジェンデ政権のような自由選挙による政権奪取、お隣K国はこのタイプと、ある韓国ウォッチャーは述べています。

 

このブログ作成にBD版を鑑賞しています。              八点鍾

追記

歴史上クーデターでもっとも有名な方はフランス革命時のナポレオン・ボナパルトで、もっとクーデターを勉強したいのであれば、エドワード・ルトワック氏の「クーデタ入門」をお薦めします。

最後に、シュタウフェンベルグ大佐達が処刑された場所で、現在のドイツ連邦軍は「ドイツ連邦共和国に忠誠を尽くし、ドイツ民族の自由と正義を守ることを誓う」と宣誓しています。

 

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「ビリー・リンの永遠の一日」イラクの最前線から帰国したブラボー小隊を待っていたのは・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ビリー・リンの永遠の一日」(2016)です。巨匠アン・リー監督作品ですが、劇場公開されずにビデオスルーとなった作品です。

 

19歳のビリー・リン特技兵(ジヨー・アルウィン)は、2004年10月23日、イラクでの最前線で負傷したシュールーム軍曹(ヴィン・ディーゼル)を助けようとした行為で、彼の所属するブラボー小隊は米国に帰国、軍曹の葬儀に参列、11月25日のダラスカウボーイズ感謝祭ホームゲームのハーフタイムショーで最高潮に達する宣伝ツアーにも参加するように言われた。

 

彼は両親の元に帰り、姉キャサリン(クリステン・スチュワート)に会う。ダラスカウボーイズのハウスタイムショーは壮大なものだが、彼は何か虚しく、シュールーム軍曹救出の戦闘が生々しく蘇ってくる。チアガールのファイソンとも仲良くなる。

姉キャサリンがスタジアムまで来て、PTSDでイラクに戻らない様に説得するのだが、ビリーは仲間が待っているからと、一緒にIED(手製爆弾)、武装グループ、激しい戦闘の待つイラクに戻ると・・・

 

大変良く出来た厭戦映画だと思います。アン・リー監督は好戦でもなく、反戦でもなく戦争という事実、その戦闘の激しさを正確に伝えようとしています。そういう姿勢を高く評価したいと思います。

一端、戦争が開始されると今度は中々それを停めることが出来なくなります。でも、政権側は評判の悪い戦争程、何とかしなくてはと色々と手を尽くすことになります。この帰国は、映画では描かれていませんが、政権側の意向が働いていることでしょう。

この映画を見ていて、ソビエト映画の「誓いの休暇」(1959)を思い出しました。

 

単純な話を淡々と描くこともまたとても難しいことだと思います。

DVD、BD版もなかなか見つからなくてもうあきらめていたら、昨晩BS12チャンネルで放映されましたので。                    八点鍾

 

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IMDb

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「チェイサー」フランス製ハードボイルド、監督はジョルジュ・ロートネル・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「チェイサー」(1978)です。ジョルジュ・ロートネル監督のハードボイルドスリラーです。

 

パリ、朝5時。グザヴィエ(アラン・ドロン)は国会議員で友人フィリップ(モーリス・ロネ)が訪ねてきて、彼は国会議員セラノを殺したと告白する。グザヴィエは彼の為、アリバイ作りをして、セラノ議員殺害現場に赴く。そこでは、モロ警視とペルネ警視がおり、セラノ文書と呼ばれるファイルの所在を尋ねられる。

 

セラノ文書は多くの国会議員が悪行を記したファイルだった。勿論、フィリップのことも記されていた。再び、フィリップに会い、セラノ文書の所在を尋ねると愛人ヴァレリー(オルネラ・ムーティ)に渡したという。グザヴィエはヴァレリーの会いに行くのだが・・・

 

冒頭、タイトルロールにテナーサックスのむせび泣くような静かな音楽が流れ、なかなか好いムードで始まります(演奏はスタン・ゲッツ)。グザヴィエは実業家ですが、友人フィリップの為私立探偵まがいなことを引き受けます。

 

愛車は緋色のアルファロメオ2000ベルリーナ、美人の恋人フランソーワズ(M・ダルク)とお膳立ては素晴らしいのですか、ウーンちょっとロートネル監督はミスマッチのようです。例えば「狼どもの報酬」「警部」では、彼の個性が良く出た映画でしたが、この映画では、もう一つのような感じがします。例えば、輸送中の自動車が彼の車に落ちて来るシーン等は、一番の見せ場ですがあまり盛り上がりません。

 

黒幕の一人としてクラウス・キンスキーも共演していますが、「戦場のガンマン」とか「アギーレ/神の怒り」の方がより印象的でした。但し、映画全体のムードとオルネラ・ムーティはとても良かったと思います。フランス製サスペンススリラーが好きな人は満足される作品だと思います。

 

ブログ作成にBD版を鑑賞しています。         八点鍾

 

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番外編「カリ・モーラ」あのトマス・ハリス最新作・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介するのはトマス・ハリス最新作「カリ・モーラ」です。

 

今日は映画ではなく、小説のご紹介です。あのハンニバル・レクターのトマス・ハリスの最新作になります。但し、この作品はレクター博士は出てきません。コロンビアの反政府左翼ゲリラFARCにいた美貌の元女兵士カリ・モーラとコロンビア犯罪組織のボス、ドン・エルネスト、全身無毛の臓器密売商ハンス・ピーター・シュナイダーの三つ巴の争いを描いた作品です。

 

何れも普通の人ではなく、ワルでタフで悪知恵の働く人物ばかりで、特に今回は全身無毛の臓器密売商のハンス・ピーター・シュナイダーがトマス・ハリス氏が愛する独特の人物でしょう。ほんと、読んでいると身の毛がよだつような男で、本当にこんな悪人いるのでしょうかと思いぐらいです。良く出来ています。

 

麻薬王パブロ・エスコバルが残した大邸宅に2,500万ドルの金塊が隠されており、その噂を聞きつけたドン・エルネストとハンス・ピーター・シュナイダーのどす黒い争いを描いた作品で、カリ・モーラはたまたまその大邸宅の管理人をアルバイトでしており、その争いに巻き込まれるのですが、かってのゲリラ兵士だった経験が生きて来ることになるのですが・・・

 

読んでみると、やはり水準以上の作品になっていますので、読んで損したと思われることはないと思いますが、彼の一番の傑作は、「レッドドラゴン」「羊たちの沈黙」でしょう。

この作品も映画化されると思いますが、ラストが少しあっけないので、もう少しアクションを盛るものと思われます。

ヒロイン、カリ・モーラは二十年前のジェニフアー・ロペスならバッチリだったと思います。いまなら、ブロンドをブルーネットに染めたアナ・デ・アルマスあたりですかね。                              八点鍾

 

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トマス・ハリス氏

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「黒いジャガー(シャフト)」これぞ、ブラックパワームービー・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「黒いジャガー(シャフト)」(1971)です。

 

数年前に「ブラックパンサー」という黒人ヒーロー映画がありました。興行的にも大成功を収めたと聞いています。それ以前に成功した黒人ヒーロー映画と言えば、この映画です。勿論、この作品以前の黒人ヒーロー映画は有ります。

例えば、このブログでも紹介しました「夜の大捜査線」がその代表だと思います。この主人公は白人の目線で作られた黒人ヒーローですが、この映画は違います。もっと白人に対して荒々しく、タフで抜け目のない黒人ヒーローが登場します。

 

アカデミー歌曲賞を受賞したアイザック・ヘイズの「黒いジャガーのテーマ」をバックに、NYの雑踏を肩で風を切って闊歩する私立探偵シャフト(リチャード・ラウンドツリー)の尖がっていること、信号は守らない、タクシーのドライバーがクラクションを鳴らそうものなら、「馬鹿野郎、どこに目を付けているのか?」という調子。

 

又、腕っぷしだけでなく頭の回転もよく、警察も一目置くというこの男が、ハーレムの黒人ボス、バンビー(モーゼス・ガン)の娘が敵対するマフィアに誘拐されたため、救出するまでのドラマだが、私立探偵と言うより、救出作戦を得意とする危機管理会社のエージェントのよう。現在の目線で鑑賞しても、良く練られたストーリであり、良く出来たサスペンススリラーです。監督は黒人のゴードン・パークス。

 

当時ローバジェット、ブラックヒーロー物の為、日本では今一つ盛り上がりに欠けた映画でしたが、アイザック・ヘイズの「黒いジャガーのテーマ」は大ヒットしました。

70年前半の日本では、黒人ヒーローよりスティーブ・マックウィーン、クリント・イーストウッドの方が人気を博していた思います。

 

黒人目線のアクションヒーロー映画は、私を含めて日本人には必要なかったように思います。米国では大ヒットしましたので、当然の如く続編が作られ、「黒いジャガー シャフト旋風」、「黒いジャガー アフリカ作戦」と公開されましたが、「シャフト旋風」はまだしも、「アフリカ作戦」はかなりお寒い出来だったと思います。

 

このブログ作成にBD版を鑑賞しています。          八点鍾

 

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