レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

「バトル・オブ・ブリテン(空軍大戦略)」大英帝国の試練 2  英本土上空での史上初の航空決戦・・・

レタントンローヤル館にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「バトル・オブ・ブリテン(空軍大戦略)」(1969)です。

バトル・オブ・ブリテン

 

1940年5月26日から6月4日に実施されたダイナモ作戦は成功だったが、ドイツ軍は諦めることはなく、アシカ作戦(英本土上陸)の準備を始めるのだった。が、大陸国であるドイツは、海軍はあるものの上陸作戦を実施したことがなく、且つRAF(英空軍)制空権化での上陸作戦は無謀ともいえるものだった。

最低条件として、RAFは叩き潰す必要があった。こうして始まったのが、バトル・オブ・ブリテン(英国の戦い)だった。

 

映画は、フランスに派遣されたホーカーハリケーンがルフトヴァッフェ(ドイツ空軍)Bf 109Eのロッテ戦法による急襲を受け、RAF派遣軍基地は壊滅。ダンケルク撤退をBBCがフランスの戦いは終わり、英国の戦いが始まると告げる。

パ・ド・カレーにあるルフトヴァッフェ第二航空艦隊基地に航空査察総監が訪れる。迎えたケッセルリング元帥、総監は航空基地を視察し、アドラーアンクリフ作戦を控えて準備断端であることを総統に伝えると。

 英国では、IFF(敵味方識別)を含んだレーダー監視防空指揮システムの構築がほぼ終わろうとした。両国はこんな状態で8月13日(アドラーターク:鷲の日)を迎えようとしていた。

 

アドラーターク当日は、ドーバーにあるレーダーサイトがスツーカによる急降下攻撃により開始された。ルフトヴァッフェはロンドン南東部のRAF飛行場奇襲に成功する。力押しで攻撃しているルフトヴァッフェに対してRAFはじりじりと追い詰められていくが、ルフトヴァッフェのロンドン誤爆により、RAFのベルリン空襲を受け、総統からの命令で攻撃対象をロンドンにしてしまうとい致命的なミスを誘発し、ロンドンは史上初の大型都市攻撃を受けることになるが、RAFには救われたことになった。が、パイロット、整備員等連日の出撃、整備で皆クタクタ。

そんな中、ゲーリングは第二航空艦隊基地を訪れ、ケッセルリング元帥の尻を叩きに来て、9月15日、ルフトヴァッフェ乾坤一擲の大攻撃を計画するのだが・・・

 

監督はガイ・ハミルトン(007/ゴールドフィンガー)。丁寧に纏めていますが、もう二匙程欲しい処。ですが、この映画を救ったのは、撮影監督フレディ・ヤング(アラビアのロレンス)を始めとする撮影スタッフ。

当時の大戦機を飛行させてドックファイトを撮影するという離れ業をやってのけて、その空撮シーンは素晴らしいの一言。このシーンを見るだけでもこの映画の価値はあります。

 

俳優陣はローレンス・オリヴィエ、ラルフ・リチャードソン、マイケル・ケイン、クリストファー・プラマー、スザンナ・ヨーク等オールスター。特にスキッパー少佐を演じたロバート・ショウが儲け役。

 

英国はなんとかバトル・オブ・ブリテンに勝利する。ドイツ第三帝国の次なる野望は対ソ戦であった。やがて、大日本帝国海軍が真珠湾奇襲攻撃を行い、米国はドイツに宣戦布告を行い、英国は盟邦米国と共に枢軸軍と戦うことになるが英国の試練は続くのであった。 

 

このブログ作成にBD版を鑑賞しています。       八点鍾 

 

 












         

 

 

 

 

 

マエストロ モリコーネ 追悼

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。少し前から恐れていましたが、とうとうこの日が来てしまいました。マエストロ エンニオ・モリコーネが亡くなりました。謹んで追悼したいと思います。

 

彼は、確か二度来日しています。幸いにして二度ともコンサートに馳せ参じることが出来ました。あの時の感動は、言葉に表すことが出来ません。

東京フォーラムAホール、彼のタクトで導き出される旋律は、天上の調べでした。二度目は、マエストロ モリコーネとは別のゲストがお見えになり、会場が大いに盛り上がりました。そう、小泉純一郎首相がお見えになり大いに盛り上がりました。小泉首相がモリコーネのファンとは知りませんでした。

 

多分、今頃は天国で、同じくマエストロ ニーノ・ロータと楽しく談笑していることでしょう。                            八点鍾

 

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「ダンケルク」大英帝国の試練 1、ノーラン監督の意欲的実験作・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ダンケルク」(2017)です。

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IMDb

第一次、第二次世界大戦は共に覇権国英国に対する新興国ドイツの挑戦だった。ドイツは破れ、ヴェルサイユ体制とワイマール憲法の基、平和国家として再建されるはずであったが、ナチス党なる暴力団体に政権を乗っ取られ、再度、英国の平和(パクス・ブリタニカ)に挑戦してきた。

 

英国大陸派遣軍はフランス陸軍と協力し、ドイツ陸軍を迎え撃つ計画を策定していたが、ドイツ陸軍が策定した新しい軍事ドクトリン「電撃戦(ブリッツクリーク)」の前にあえなく敗北し、英国大陸派遣軍は狭いダンケルク閉じ込められてしまう。英国は、ダイナモ作戦を発動して、ダンケルクの英国将兵を救出する。

ダイナモ作戦は成功するが、大英帝国の試練続く・・・

 

前置きが長くなりましたが、映画はここから始まります。クリストファー・ノーラン監督作品らしく普通の戦争映画になってません。まず、映画は三幕、ダンケルクの海岸を逃げ回る英兵士の一週間、民間人による救援船活動の一日、そしてRAF(英国空軍)スピットファイアMk.Ⅰの海上護衛活動の一時間を上手く編集した映画になっています。

 

更に凄いのは、「ダークナイト」から始まったIMAXとシネマスコープ両サイズが混在する映画になっている。そして、それが映画を鑑賞する上での障害になっていない。とても自然な流れになっていることだ。ともすれば、監督の自己満足の様な技巧がそうではなく、映画を鑑賞する上で必要な技巧になっていること。これは大変素晴らしいことだ。

ラスト、スピットファイアMk.Ⅰを手前においてダンケルク海岸を俯瞰で撮影しているシーン等素晴らしいの一言。何気ないシーンだがとても手間と予算がかかったシーンさりげなく取り入れているところが何とも言えない。

 

こういう芸当が許されるのも、安定した興行収入を得られているからであろう。そういう意味で、彼は、現在最高のクラスの監督の一人と言って良いだろう。次の作品「テネット」も観客が待ち望む期待の一作だろう。        

 

このブログ作成にBD版を鑑賞しています。      八点鍾

 

ダンケルク 陸

ダンケルク 陸

 

ダンケルク 海

ダンケルク 海

ダンケルク 海

ダンケルク 空

ダンケルク 空

ダンケルク 空











 

 

 

 

「シャーキーズマシーン」バート・レイノルズが素晴らしく輝いていた頃・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「シャーキーズマシーン」(1981)です。

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IMDb

バート・レイノルズ主演のポリスアクションです。70年代のバート・レイノルズは凄かった。ジョン・ブアマン監督「脱出」で名を上げ、ロバート・アルドリッチ監督「ハッスル」「ロンゲストヤード」、ドン・シーゲル監督「ラフ・カット」。そして、彼自身の監督によるこの作品「シャーキーズマシーン」の登場。他に「トランザム」シリーズ、「キャノンボール」シリーズもあり、本当に日の出の勢いとはこのことでしょう。

 

映画はアトランタ、ウェスチィン・ピーチトリー・プラザ・ホテルの空撮から始まり、カメラはヤクの売人を逮捕するために現場に向かうアトランタ市警殺人課刑事シャーキー(バート・レイノルズ)に寄っていきます。撮影がウイリアム・A・フレイカーだからとても良い感じです。

が、同僚の失敗で、死者が出てシャーキーは降格、そして風紀課に移動となりますが、あるエスコートガールの失言から州知事選挙にスキャンダルの臭いを嗅ぎ付け、謎の女ドミノ(レイチェル・ワード)を監視、盗聴し始めます。

案の定、州知事が引っかかるが、間もなくヤクチュウの殺し屋(ヘンリ・シルバー)によってドミノは射殺される。そして、監視テープ等が盗まれ、シャーキーの仲間達も襲われる。

ひょんなことから、シャーキーはドミノを見つけ、セイフティ・ハウスへ匿い、この事件のフィクサー(ビットリオ・ガスマン)に立ち向かうのだが・・・

 

この映画、バート・レイノルズのスター映画ですが、自身で監督もしており、中々好い味が出ています。撮影もいいし、音楽も良い。冒頭、ランディ・クロフォード「ストリートライフ」、盗聴器を取り付けるシーンはマンハッタン・トランスファー「ルート66」、ジュリー・ロンドン「マイファニーバレンタイン」ラストはサラ・ヴォーンとジョー・ウィリアムズ「ビフォアーユー」と素晴らしいナンバーが含まれています。

 

丁度この頃、ハリウッド映画に日本文化、日本製品が色々と紹介され始めた頃で、例えば、同僚アーチが話す禅のエピソード、テクニクスのオーディオ装置など時代を感じさせます。ヤクチュウの殺し屋を演じたヘンリ・シルバーは異色の出来栄えで、暫くするとフランス映画「パリ警視 J」と言う作品でギャングのボスを熱演する程でした。

又、こういう映画は、みんなで集まってお酒を飲みながら「ゴーシャーキー! ゴー !」と声を上げながら見ると更に面白くなるかもしれません。

 

やがてバートの人気は一段落しますが、1997年ポール・トーマス・アンダーソン監「ブギーナイツ」で再び復活します。が昔の様にはなりませんでした。

 

このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。        八点鍾

 

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「MASH」作曲家ジョニー・マンデルさん追悼

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。あの「いそしぎ」「MASH」で有名なジョニー・マンデルさんが亡くなりました。謹んで追悼します。

 

ロバート・ワイズ監督「私は死にたくない」辺りで頭角を現し、「いそしぎ」でアカデミー歌曲賞を受賞しました。

私が色々書くよりそのサウンドをお聞きいただく方がよろしいかと思います。

ここでは彼の代表作「動く標的」「ポイントブランク」「MASH」をご紹介します。彼の素晴しいサウンドをお楽しみ下さい。                 八点鍾

 

 

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「熱い賭け」フリーシネマ派カレル・ライス監督社会ドラマですが・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「熱い賭け」(1974)です。

 

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第二次世界大戦後、フランスで既存の映画とは違う新しい映画スタイルを確立しようという運動が起こり、それをヌーヴェルヴァーグと呼ばれました。英国でも日本でも同様の運動が発生し、英国ではフリーシネマと呼ばれ、トニー・リチャードソン「蜜の味」、リンゼイ・アンダーソン「孤独の報酬」そしてカレル・ライス「土曜の夜と日曜の朝」が中心となって映画作りを始めました。

 

この映画は、そのカレル・ライス監督がハリウッドで製作した映画ですから、普通のハリウッド映画のようにパッピーエンドではなく、大変良く出来ていますし、且つ厳しい内容の映画になっています。

 

冒頭、大学で英文学の教授アクセル(ジェームス・カーン)が賭場で負け続け、4万4千ドルの借金を負うところから始まります。彼は綺麗なビリー(ローレン・ハットン)と言う恋人もおり、母は医者をしており、祖父はリトアニアからの移民ですが、事業で成功し大きなフランチャイズの家具店を経営しています。そんな家族に囲まれているのに。彼は、仕方なく母に泣きつきます。

 

ここのシーンがとても良いです。どんよりと曇った人がいない海岸で、母が泳ぎから戻ると、浜辺に書かれた4万4千の文字、母に問い詰められ、頬を叩かれ、懇願する。

この時の母の表情が、あきれ果てたような表情が、とても上手い。

母の貯金を切り崩して、4万4千ドル、早速胴元に返すのかと思いきや、又、賭けをやり始める。この辺りの心理は、賭博運がない私にはまったく理解出来ないのですが。

 

賭博者は、一般にツキが付いている時は何をやっても儲かると思っているようで、彼も前回はついていなかったが、今回はと再挑戦します。ベガスまで出かけて、ダイス、カードとツキまくり、借金以上大金を手に入れます。

が、バスケットボール賭博で負け、再び借金を負うことになり、相手の胴元から学生にバスケットボールの八百長をやらせることを要求されますが・・・

 

本当に厳しい映画です。アクセルを突き放す、厳しい現実のラストも胸を打ちます。

さすがカレル・ライス監督です。ジェームス・カーンも素晴らしい演技を披露してくれます。最近はこういうタイプの映画が無くなりました。ハリウッドでこの手の映画は、マーティン・スコセッシ監督がマフィア物を題材にして作られるまで殆どなかったと思います。

コミック映画も否定しませんが、現実を直視し、自分を刮目させる映画を鑑賞することも大切だと思います。最後に、この作品ではマーラー交響曲第一番が効果的に使用されています。

 

このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。          八点鍾

 

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「悪の法則ロングバージョン」スコット監督のキャリアで最も過激なノワールスリラー・・・


レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「悪の法則」(2013)です。

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IMDb

 

映画は、カウンセラー(マイケル・ファスベンダー)と呼ばれる弁護士が、軽い気持ちで麻薬ビジネスに手を染める。が、偶々対応したバイカーのスピード違反を釈放したことから、このバイカーはあるカルテルの運び屋を行っており、おまけにこのバイカーが殺されて、このバイカーが運んでいた麻薬運搬トラックのスタータキットを盗まれたことで麻薬運搬トラックが盗まれ、あらぬ疑いを掛けられてカウンセラーは窮地に落ちてしまう・・・

 

最近の作品ですが、あまり評判が良くありません。私も劇場で鑑賞しましたが、グロい描写が目に付き、プロットも良く判りませんでした。

少し前に、ドゥニ・ヴィルヌーブ監督「ボーダーライン」を鑑賞し、ロングバージョン(20分程追加)のBDが発売されたのでそれを鑑賞して、この作品の狙いが理解できました。

 

まず、シウダー・ファレスという都市について何がしか情報がないとこの作品の狙いが判らないと思います。映画にはチラリとしか登場しませんが、ここは麻薬カルテルによる内戦拠点と言う事実。もはや警察程度の治安機関では対処できない。そういう事実を知らないと作品の輪郭がぼやけてしまうこと。今回は、前述した「ボーダーライン」を鑑賞済みだったので、大変よく理解できた。

 

もう一つ、ロングバージョンはマルキナ(キャメロン・ディアス)の行動がかなり追加されていて、彼女がこのトラブルの元締めだということが判るが、短縮版でも彼女が色々と糸を引いていることが判るが、一つしっくりこなかった。但し、彼女単独で行っていたことか、どこかのカルテルの依頼でやっていたのかは判明しない。

 

グロい描写(ポリートのシーン)が追加されたのは勘弁して欲しいが、スナッフフィルムの件はセリフのみだが、結構気味が悪い。いつも明るく楽しいキャメロン・ディアスが深刻な顔つきで、最後に高笑いする映画ですが、何れカルテル戦争に巻き込まれて同じ運命になるのではないかと思う次第。

 

映画としてはロングバージョンの方が判り易く完成度が向上したと感じます。リドリー・スコット監督作品の中で異色のノワール・スリラーとしていぶし銀のように輝くことと思います。

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全ての始まりがここ

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