レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

「パリ 13区」パリに住む人達のラブロマンス物と思って見たら…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「パリ 13区」(2022)です。

何も考えずに時間が空いたので映画館に入って見た作品です。個人的には2006年頃見た「パリ、ジュテーム」のようなオムニバス・ラブロマンスかなと思っていたら、全く違っていたので驚いた次第です。

パリの話なのに登場したのは台湾系フランス人とアフリカ系フランス人、のっけからセックス描写、モノクロ作品、セックスコメディでまあそれなりに良く出来てはいますが、何か私の感性と違うなと思い見ていました。手を抜いて製作している訳ではないので、帰宅後、監督ジャック・オーディアールのキャリアを見てみると、なかなかのキャリアの持ち主で、この作品を見たのが失敗だということが判りました。

「預言者」「ディーパンの闘い」「ゴールデン・リバー」辺りを鑑賞するのが筋でした。申し訳ありません。とは言うものの何も書かないのも悪いので、少しばかり感想を書き連ねます。

映画は、台湾系フランス人エミリーの下にアフリカ系フランス人カミーユがルームシェアの相棒として訪れるところから始まります。二人は意気投合して早速セックスを。

ボルドーから上京しソルボンヌ大学に復学したノラは、学生達のパーティで金髪のカツラを付けてセクシーな装いで参加した為、有名なセックスワーカーと間違えられて皆から冷やかされ、大学を止めることに。そして、カミーユが働いている不動産会社で働くのだが…

悪い映画ではありませんが、どうも感性が合わなくて。というよりセックスありきのコメディがね。ジャック・リヴェット、エリック・ロメールあたりの作品が懐かしく思われます。エミリーを演じたルーシー・チャンはなかなか良いと思いました。 八点鍾                           

 

追記 この手の映画ならベルトリッチ監督「ドリーマーズ」の方が好きです。五月革命を舞台にした映画でシネアストの巡礼地、あのシネマテークも出てきます。私も、勿論巡礼しましたよ。仕事でフランス行った時、休日に行きました。同行してくれたチェコ人の同僚は、なんでこんなところに来るんだと言っていましたが。説明しても解からないだろうから何も言いませんでしたが…

longride.jp

 

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「シン・ウルトラマン」楽しいリブート作品、ノスタルジック映画と言ったら怒られるかな…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画はあの「シン・ウルトラマン」(2022)です。

この作品、コロナ禍で公開延期になり、ようやく公開されました。又、その題名もある年代以上の方にはノスタルジックに響くでしょう。公開された映画は、私が思っていたような作品ではありませんでしたが、約2時間楽しませてくれました。

「シン・ゴジラ」でもやたら行政組織の怪獣対応ぶりをリアルに描いていたように、そうこの作品も、TV「ウルトラマン」で活躍する"科特隊"が「禍特対」になって防災省の下部組織になっているのが笑えますが。

特に冒頭、「ウルトラQ」を模倣したファーストシーンはなかなか面白くて、あんな感じで全体を覆ってくれたらと思いましたが、それはそれとして、私は前述したように結構楽しませてもらいました。

新人の浅見隊員(長澤まさみ)が配属された時、先輩の船縁隊員(早見あかり)が言うセリフが「霞が関の独立愚連隊へようこそ!」、喜八ファンでしたね、うーん美しいです。

滝隊員のデスクの後ろには「マイティ・ジャック」のMJ号が、うーんこれも美しいです。とこんな感じで好きな人には堪らないおもちゃ箱の様で…

気に入らないところを上げると怪獣ネロンガ攻撃時に米軍B-2爆撃機を使用しているシーン、回転型爆弾層まで丁寧に仕上げて見事ですが、「シン・ゴジラ」もそうでしたが、ラスト米軍の無人機を利用してゴジラを「ヤシオリ」作戦で凍結するシーン、何か主権国家でないような描き方で…

続編を製作されるのなら、出来れば「禍特対」を「科特隊」に格上げして科特隊日本支部、ユニフォーム、ジェットビートル、特殊潜航艇S号等をこの時代に合わせて欲しいと思います。又、エンドロールにオリジナルデザイン成田亨氏の名前が上げられていました。これも本当に美しいと思います。                                                  八点鍾

 

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shin-ultraman.jp

           以下は成田亨氏のコンセプトアート

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「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」あのウクライナでの人為的飢饉ホロドモールを描いた映画…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」(2019)です。

今回のロシアによるウクライナ侵攻に於いて、あるブロ友から1930年代に起こった人為的飢饉ホロドモールの事を教えて貰いました。この作品は、そのホロドモールを描いた作です。そういう意味でこの作品は観客を選びますが、良く出来た作品だと思います。

監督はアグシニェシカ・ホランド、ポーランド人で女性、アンジェイ・ワイダ監督の下で腕を磨いたようです。

この作品、まあ、なんていうかスターリンと言う独裁者は、おぞましいというか調べれば調べる程、異常なほど猜疑心が強く領土に対して人一倍野心があり、本当に良い噂を聞かない人類最低の男ではないかと思います。私はあのヒトラーより酷いのではないかと思います。映画ではウクライナでのガリバニズムのシーンもあります。

お話は、元首相ロイド・ジョージの外交顧問をしていたジャーナリスト、ガレス・ジョーンズは世界大恐慌の最中、ソ連だけが経済成長をしているのは何か裏があるのだろうと思い、フリーランスのジャーナリストとしてソ連に行き、当局の監視の目を潜り抜けウクライナの惨状を目にする。ガレスは逮捕されるが外国人の為口外しないことを条件に国外追放となる。彼はウクライナで見た事を発表し、モスクワにいる著名な米国記者デュランティと対立することになるのだが…

ホロドモールについて知ったのは前述したように最近です。昔、ロシア好きの世界史の先生がソ連が集団農業化、富農撲滅するにあたって若干のトラブルがあったと言っていたのは知っていましたが、こんな酷いことが行われていたなんて。Wikiでは、こんなことが書かれています。"1937年の国勢調査では想定より人口が800万人少なかったのでスターリンはこの人口学者を処刑した"と。

もう信じられないことが起こっていたようです。この映画でも字幕で出てきますが、ウクライナのことを「スターリンの金脈」と呼んでいたようです。統治者側からすれば、"ウクライナは収奪の地"だったのでしょう。

そしていまでも… ということでとても志の高い映画になっています。

このブログ作成にBD版を鑑賞しています。          八点鍾

 

興味のある方は読んで見て下さい。

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film.ua

 

追記 このジョーンズさん、英国に戻りジョージ・オーウェルに会っているんです。ソ連に対しての疑惑を調べるべく満州国へ渡りソ連の情報を得ようと頑張るのですが…




「現金に手を出すな」フィルムノワールの古典、グリスビーのテーマ、ギャバンのドスの効いた演技…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「現金に手を出すな」(1954)です。

フィルムノワールの古典です。この手の映画が好きな方は、このさくひんはどうしても外せない作品だと思います。グリスビーのテーマといい、ギャバンのドスの効いた演技、プロット、ミリュー(暗黒街)に生きる男達の描き方、その世界に生きる者達のその習わしと言うか仁義、全てが上手く噛み合った作品になっています。少し前に紹介した「死刑台のエレベーター」は、音楽、撮影の先進性が飛び抜けた作品ですが、全体のバランスよくとれたこの映画と比較すると、こちらの方が良く出来ていると思います。「穴」「肉体の冠」の監督はジャック・ベッケル。

映画は、ブーシェの店でたむろするマックス(ジャン・ギャバン)とリトン、女達とピエロのキャバレーへ向かう。女の一人ジョジィ(ジャンヌ・モロー)が手の甲にヘロインをのせて吸引しようとすると怒り出すリトン。

キャバレーでアンジェロ(リノ・ヴァンチェラ)に会い、彼とジョジィの怪しい関係に気付くマックス。キャバレーで楽しんでアパートに戻ろうとすると救急車が着けてくる。部屋に戻り、MBA拳銃で男達を威嚇するマックス、リトンに連絡してアンジェロの罠から救い出すマックス。マックスのセイフティハウスで、ワインとラスクにパテを付けたつまみで夜食を取る二人。うーん、美しいです。

リトンがジョジィにオルリー空港での金塊強奪の話を匂わせたので、アンジェロ達がリトンを襲い、金塊を奪い去ろうとしたのだった。危ないと感じたマックスは金塊を乗せてフォード・ヴェデッドを運転し、伯父の古物商に換金を頼むのだが、ジョジィに会いに行ったリトンは再び拘束され、アンジェロから連絡が入る「金塊と交換だ」と。

マックスとピエロは、ステンマークⅡ機関銃、トンプソン機関銃で武装してアンジェロ達と対決するのだが…

前述したようにフィルムノワールの古典です。冒頭のキャバレーのシーン等、メルヴィルが何度も同じようなシーンを「ギャング」「サムライ」「仁義」「リスボン特急」で撮り続けています。だから、あのノワールフイルム独特の雰囲気が漂っている映画と言っていいでしょう。

本当にジャン・ギャバンは素晴らしいと思います。特に行きつけのブーシェの店で、ブーシェに10万フラン渡して、

「これを預かってくれ。帰ってこなかったらこれで弁護士を雇って面会に来てくれ」と言うシーンなんかとてもいい味が出て…

このブログ作成にBD版を鑑賞しています。        八点鍾

珍しくデラヘイ135MSが登場します

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番外編 個性派ティルダ・スウィントンと言う女優とその他もろもろと…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日は趣向を変えて個性派女優ティルダ・スウィントンとその他もろもろについて取り留めなく書き連ねたく。

実は、少し前「ドクターストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」を鑑賞しましたが、まるでマッドネスの映画で、あまり面白く感じられませんでした。このコミック独特の世界観の敷居が高かったようで…

又、キャスティングが平凡でエリザベス・オルセンは好い女優ですが、前作登場したティルダ・スウィントンと比較するとやはり薄味の女優なので、その辺りが物足りなかったのかもしれません。

このティルダ・スウィントン、独特の容貌で一度見たら忘れることはないでしょう。最初に見たのは「バニラスカイ」からでしたが、「猟人日記」「コンスタンティン」「フィクサー」「倫敦から来た男」「ミラノ、愛に生きる」「胸騒ぎのシチリア」「ドクターストレンジ」「サスペリア」「フレンチ・ディスパッチ…」「メモリア」等独特な作品群が彼女の個性を際立たせており、うーん美しいです。

又、彼女が登場しているファションフォトもなかなか面白い。



少し前TVで紹介していましたが、「007/ ノー・タイム・トゥ・ダイ」で日本の前掛けが登場したのを知っていますか?

 

 

最近、ネットでクロード・ルルーシュ監督「流れ者」の予告編を見つけて嬉しかった。メルヴィル作品とは違うポップなノワールサスペンス好きだな。

 

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                                           流れ者 予告編

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         こちらは男と女の詩 主題歌ミレイユ・マチユー

www.youtube.com アラン・コルノー監督メナース 予告編

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 ルルーシュ監督 夢追い オープニング これも良かった

 

本日は、なんとなく取り留めのないブログでした。    八点鍾

 

 

「プロフェシー 恐怖の予言」ホラーモンスター映画、監督があのジョン・フランケンハイマーなのですが…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「プロフェシー 恐怖の予言」(1979)です。

監督が硬派なアクション物を得意とするあのジョン・フランケンハイマーなので、ひょっとしたら宇宙ゴシックホラー映画「エイリアン」を超える映画になるのではと思い、劇場に入った思い出があります。結果はあれっ、と言う感じでしたが…ハリウッドって大変なところで、作品が当たらないともう最悪、それが二本、三本と続くと居場所がなくなってしまうようで…

この辺りから段々と巷ではB級アクション映画監督になってしまったようで。「影なき狙撃者」「五月の七日間」「大列車作戦」「グランプリ」「さすらいの大空」「フィクサー」「ホースメン」「フレンチコネクション2」を知っている映画ファンには寂しい限りでした。

映画は、ワシントンで救急病棟に勤めるロブとその妻マギー(タリア・シャイアー)は、ワシントンを離れてメイン州へ。それは、製紙工場と原住民との対立の調査の為だった。調査を始めると、行方不明者の続出、原住民の異常な疾患、死産、奇形、大型オタマジャクシ等何かが自然体系に異常を及ぼしているように覚えた。

やがて、それは原住民が言う伝説の怪物カターディンの出現の前ぶれと原住民の長老が言うのだが…

今回再見して、そんなに悪くはありませんがやはりズレていると思いました。メチル水銀公害問題と怪物伝説を一緒にすると重くなってつまらなくなります。

やはり、奥深い原生林の中から目覚めた伝説の怪物と言うスタイルにした方が良かったと思います。そうするとモンスターの造形も違ってくるし、原生林の描写も深みが出て来ると思いますし…

でも、後半カターディンが登場、対決のシーンはやはりアクション派フランケンハイマー監督冴えていますが。

以後、フランケンハイマー監督作として「最後のサムライ ザ・チャレンジ」「イヤー・オブ・ザ・ガン」「RONIN」辺りがお薦めですが…

このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。         八点鍾

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「ローン・レンジャー」ウィリアムテル序曲を伴奏に大暴れするキモサベとトントのお茶目なコメディ西部劇…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ローン・レンジャー」(2013)です。

西部劇と言えば、一般に南北戦争後の米国西部開拓ドラマですが、70年頃のニューシネマで変貌して、21世紀初めではこんな様相になるなんて誰が想像できただろう。勿論「レヴェナント:蘇えりし者」の様な作品もありますが、それでも、昔のような開拓魂を描いた映画ではありませんでした。

でもこの作品、私嫌いではありません。監督はゴア・ヴァービンスキーで、彼の「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズより好きですね。理由は笑わせてくれるし、どこかしらあのレオーネ監督「ウェスタン」の味わいが残っているので、懐かしさ一杯の感情が込み上げてくるんです。そういう意味でうーん、美しいと思います。

映画は、1933年サンフランシスコの遊園地で一人の少年が年取ったトント(ジョニー・デップ)に出会い、トントの回想から始まります。列車の中で鎖に繋がれたトント、やがて鎖を外して逃亡した極悪人キャヴェンディッシュを追跡するトントと新任検事ジョン・リード(アーミー・ハマー)、テキサスレンジャーの兄ダンはキャヴェンディッシュは殺されてしまうが、ジョンとトントのお茶目なコンビは恐るべき陰謀に立ち向かうことになるのだった…

ジョニー・デップという役者、変わった人だなとあまり関心がありませんでしたが、この作品辺りから、正確に言えばあの「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズから随分上手くなったと思います。「オリエント急行殺人事件」「ミナマタ」等を見ているとシリアスな役もコメディも出来る間口の広い、ひょっとしたらマーロン・ブランドを超えることが出来る様な役者になりつつあるのかもしれません。

特に、ラストウィリアムテル序曲の伴奏で始まる並行して走る蒸気機関車2台のチェイスシーンでの梯子を利用したとぼけたアクション、この映画の白眉と言っていいでしょう。とても壮観な見ものになっています。うーん、美しいです。

本当に楽しめました。時々こういう映画が出て来てほしいと思います。

このブログ作成にBD版を鑑賞しています。              八点鍾

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