レタントンローヤル館にお出で頂き有難うございます。本日、紹介するのは「レッド・スパロー」です。
映画を見て驚いたことに、ソビエト連邦崩壊後のエスピオナージ物、新たな冷戦物になっているのに驚きました。冒頭のバレー舞踏『火の鳥』を参考にしたバレーシーンと米国情報部員ネイトがロシア側ダブルエージェントと連絡を取り合うシーンがカットバックで描かれ、空間的に広がるシーンが見せ場になります。
こういうシーンは、第七番目の芸術である映画でしか描くことの出来ないシーンだと思います。バレーで足を骨折し、バレリーナの道を諦めたドミニカ(J・ローレンス)はスパイ養成学校を卒業し、スパローとして活躍し始めます。フランシス・ローレンス監督とも結構息があっているようで、「ハンガーゲーム2」から始まる作品の中では、私にとって興味深く鑑賞できました。フランスのメルヴィル監督が言うように、人生の三つの要素、友情、愛情そして裏切りが絡み合い、物語が進行していきます。ロンドンから連れ戻され、本国で拷問のシーン、ネイトとの束の間の安らぎがあっという間にロシア側の殺し屋に襲われるシーン、ここは迫力のあるシーンで、皮膚の皮を削ぎ落す医療器具の登場がぞっーとさせる。でも、このシーンはこの映画の白眉だと思います。同時にヒチコック作品「引き裂かれたカーテン」の中でグロメックという東ドイツ監視員をガスオーブンで殺すシーンを思い出しました。
そこからもうひと捻りあって映画は終わりますが、なかなか見応えあるサスペンススリラーになっています。シャーロット・ランプリングが結構重要な役で出ているのに驚きましたが、私見ですが歳を取り過ぎているのと、演技の質が作品に合わないのではと思います。出来ることなら、ケイト・ウィンスレットかヘレン・ミレン辺りを起用して頂くともっと迫力のある仕上がりになるのではと思います。
やはり、ランプリングはフランソワ・オゾン作品辺りが一番ではないかと考えますが・・
でも、最近では、とても好きな作品です。