レタントンローヤル館にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「仁義(Le Cercle Rouge)」(1970)です。
映画が始まると、あるエピグラムが映し出される。
ブッダは赤いチョークを掴むと、輪を描いて言った。
「男達はたとえ彼らがそのことを知らなくても、いつの日か再開する運命にある。何が起ころうともそれぞれの道を辿って、指定された日に皆避けようもなく赤い輪の中に再び会うことになるのだ」
深夜、マルセイユの街を疾走する車、マッティ警視(プールヴィル)とヴォジェル(ジャン・マリア・ボロンテ)はパリ行き夜行列車に乗り込む。同じ日コレイ(アラン・ドロン)はマルセイユの刑務所を仮釈放される。ヴォジェルはマッティの隙を見て逃げ出し、コレイの車のトランクに隠れる。男達はパリに到着し、出所前に看守から話が合ったヴォンドーム広場の宝石店を襲う決意をし、ヴォジェルの提案で元警官の射撃の達人ジャンセン(イヴ・モンタン)を仲間に入れ、宝石店に向かうのだが・・・
この映画を拝見したのは、大学生の時で確か新宿文化だったと思います。映画を見て、失望しました。お話は単純だし、捻りもない。「いぬ」の方が、いや「ギャング」の方がもっと捻りが利いている。物語の悲劇性も「影の軍隊」の方が深いし・・・
でも、何度も見ているうちにこれはムードを楽しむ映画だと気づいた。するとどうだろう? モンタンのかっこいいことこの上なしだし、ずっと喜劇役者だったプールヴィルの渋いこと渋いこと。見ていて惚れ惚れする。ドロンも寡黙で、男惚れする程、小股が切れ上がっている。
又、最近BD版を購入して拝見すると、色彩を殺したような画質で、メルヴィル監督が求めていたような色彩そのものに仕上がっていて、見ていてうっとりするような仕上がりになっている。劇場ではそんな仕上がりだった記憶はないのだが。
男達はやがて罠にはまり、悲劇的な最期を迎える。 八点鍾