レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「大河のうた」(1956)です。
この作品は、多分インドで最も優れたサタジット・レイ監督「大地のうた」続く二作目に当たります。映画としては大変優れた民族文化映画ということになるでしょうか?
前回紹介した「サーホー」とは立ち位置が違う大変高級な映画です。
1920年、ベナレス(現在のヴァーラナーシ)にやって来た家族3人のドラマになります。映画は、ガート群でヒンドュー信者が沐浴するところから始まります。ここはヒンドュー教一大聖地でとても重要な場所だそうです。
主人公オプーは、やんちゃ盛りの子供で父は僧として務めをしています。母は日々の家事に追われている様子を淡々と描いています。オプーが自然体で演技しているところが素晴らしいと思います。映画で子供を使うのは難しいとよく言われます。
やがて、一家に不幸が訪れて、父が倒れ亡くなってしまいます。仕方なく、伯父に従い母とオプーは田舎に帰ります。家から遠くを望むと、遥か向こうの土手を機関車疾走しているシーンなどは監督の並々ならぬ力量を感じることが出来ます。
小学校に入るとオプーは才能を伸ばし出し、訪れた視察官の前で教科書の詩を朗読し、皆を驚かせます。この時のベンガル語の響きはとても美しく、この辺りからこの映画の持つ力が画面に溢れ出します。正直言って、前半父の死辺りまで退屈でしたが、一家が田舎に戻る辺りから画面に釘付けになります。
オプーは校長先生の計らいで奨学金を得て、カルカッタ大学に進みます。そして、母と別れることになり、母は自分の寿命を感じ始めるのだが・・・
全体にインド風俗描写が素晴らしい。寺院、船、機関車、佇まい、服装、風習、風景等。特にカルカッタに出たオプーは学費のため、印刷会社で働きます。そこで担当する印刷機械など古風でとても雰囲気が出ており素晴らしいと思います。
大変優れた映画ですが、個人的な嗜好でいえば、もう少しテンポが速い方が良いのかなとも思いますが、この監督に慣れて来るとこのテンポがたまらないということになるものと思います。
最後に音楽が素晴らしく、ラビィ・シャンカールが作曲、演奏しています。少し前紹介した「マイブルーベリーナイツ」のノラ・ジョーンズのお父様と聞いています。
八点鍾
なお、このブログ作成にIVC版DVDを鑑賞しました。このDVDは、画質があまりよくなく、もっと高画質のBDで鑑賞したいと感じたことを追記します。