レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ノルウェイの森」(2010)です。
まず、最初にお断りしておきますが、私は村上春樹氏の作品を一つも読んだことがありません。何か敷居が高そうで・・・ ですから、このブログはあくまでもベトナム人監督トラン・アン・ユン(青いパパイヤの香り、夏至)の「ノルウェイの森」について書かせてもらいます。
この映画を劇場で鑑賞した時、あの高度経済成長期の日本が、ベトナム人監督によって良く描けているなと感心しました。服装、自動車、建物、寮、喫茶店、そのテーブル、椅子、ディスプレイケース、大学の事務室、アジ演説の看板、学生によるデモ隊、当時の音楽使い方等々当時を少しでも知る人にとってとてもノスタルジックな映画だと思った。現在、70~75歳の方々団塊の世代と呼ばれる人達の青春映画だと。
当時、世界中で学生によるデモ活動が常態化していた。類似映画としては「いちご白書」「R.P.M.」「IFもしも....」があり、最近ではベルトルッチ監督「ドリーマー」がありますが。どこの国でも学生運動は一過性の政治活動と言うことで収束しました。
ストーリは、ちょっと歪な三角関係で、自殺したキズキのことが忘れられなくて精神障害になった直子(菊地凛子)と緑(水原希子)がワタナベ(松山ケンイチ)を巡る話で、特別な仕掛けがあるわけでなく・・・
再見して、やはり印象は変わらなかった。この映画の美術班(安宅紀史、イェンケ・リュゲルヌ)は凄いと思う。加えて、全編に漂う70年独特の日本映画の雰囲気にも今度は驚いた。例えば「サード」「18歳、海へ」「旅の重さ」等など。
でも、としては余り感動しなかった。思うにこの作家の作品は、映像化には向いていない。小説ではもっと細かく心理描写が書き込まれているに違いない。
彼の諸作の中には、もっと映像化に適した作品もあるかもしれないが、この作品は向いていない様に思う。
ただ、この小説はワタナベがハンブルグ空港に到着した時にBGMでビートルズ「ノルウェイの森」を聞き、学生時代を回想するお話ですが、そのシーンがなかったのは監督の良識だと思いました。
ブログ作成にBD版(劇場公開版)を鑑賞しました。 八点鍾