レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「追想」(1975)です。
監督があの「冒険者たち」のロベール・アンリコです。「追想」というロマンチックな題名、フランソワ・ド・ルーペの柔らかい音楽なので「冒険者たち」のような甘い青春物と思われるかもしれませんが、この映画は1944年6月、オラドゥール=シュル=グラヌの村で起こった独軍武装親衛隊によって行われた虐殺を基にして作られた映画です。
ですから、冒頭、ジュリアン(フィリップ・ノワレ)、クララ(ロミー・シュナイダー)、その娘フローレンスが三人で自転車を楽しそうにこぐシーンを除くと、一部回想シーンは省きますが、かなり厳しいシーンの連続です。
外科医ジュリアンが務めている病院に民兵団(Milice:ミリス)が突然現れて、負傷したレジスタンスの男をしょっ引いて行くシーン、民兵団はかなり非道な奴らで、例えばドイツ国内以上にフランス国内でユダヤ人狩りを行い、収容所に送り込んだと資料で読んだことがあります。「影の軍隊」でも、リノ・バンチュラを逮捕するのはこの民兵団です。
ジュリアンが民兵団に脅かされて、妻子を田舎に疎開させるのは当然でしょう。あんなに美しい妻クララと娘フローレンスだから。特に、この映画のロミー・シュナイダーの美しさは本当に際立っています。
ところがノルマンジーの戦闘の為に増派された部隊がその村の近くを通ったことが悲劇の始まりになりました。当時、フランスノルマンジーに連合国が第二戦線を形成したので、フランスレジスタンス(マキ)の活躍は活発になり、その対応にドイツ側は思い切った対応をしていたようです。
外科手術を明け方まで行って、久しぶりに田舎に帰ったジュリアンの見た光景は、地獄だったに違いありません。そりゃ、幼馴染の男女が教会で殺され、おまけにあの美しい妻クララと娘フローレンスの死体を見れば、そりゃわが身を顧みず、古いショットガンを持ち出し、復讐するでしょう。おまけに武装親衛隊は、自分の朽ちた古城にいるのだから、地の利はこちらにある。一人また一人と血に祭りにあげていく・・・という映画です。
とても良く出来た映画ですがかなりショッキングなシーンがあります。あの素晴らしい「オー」「冒険者たち」「ラムの大通り」を製作した監督とはとても思えません。作風が変わったように感じられます。
私としては、やはり昔の作風、特に映画ファンなら絶対気に入る、あの恋あり歌あり、ジョン・フォードタッチありの「ラムの大通り」、あの作風で成長して欲しかったと今でも思っています。
このブログ作成にBD版を鑑賞しています。 八点鍾