レタントンローヤル館にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ひきしお」(1972)です。
マルコ・フェレーリ監督は個性の強い方ですが、同時代に活躍したパゾリーニ監督程ではありませんが、なかなかの監督だと思います。次作「最後の晩餐」(1973)の方が評価が高いのですが、私にはちょっと合わない映画なのでこちらを取り上げた次第です。
映画は、画家ジョルジョ(M・マストロヤンニ)が、その昔ドイツ空軍があった無人島に犬と共にひっそりと生活しているところに、岸に近づいてきたヨットからリサ(カトリーヌ・ドヌーブ)と言う女性が喧嘩して降りてきて、ヨットは去ってしまう。
翌日、リサを帰すべく近くの街に送り届けるのですが、彼女は又、この無人島に戻って来て、ジョルジョと一緒に生活を始めるが・・・というお話です。
ですから、ジョルジョとリサと犬だけで、物語は進行します。リサはジョルジョの関心を引きたい為、犬を溺れさせます。そして、犬の首輪をつけます。この辺りから物語は異常性愛的な志向を示します。
リサが、何故ジョルジョと一緒にいたくなったのか、その辺りの描写が殆どありません。映画は淡々と進みます。この辺りがこの映画の弱点です。反対にその辺りの描写がないので独特の映画リズムが出ていると思います。
ジョルジョの息子がやって来て、母の様子が良くないと言われるとリサを残して、家に帰りますが、彼女はそんなに悪くなく、反対にリサが家に来て、修羅場になるところ妻はとても冷静に振舞うなど良く判らないところが多いのですが、現実を超えた独特のムードを醸し出しています。
ジョルジョとリサは無人島に戻りますが、ある時、近くの街に行くために持っていた船外機付きゴムボートが沖に流され、食料を入手できなくなります。食料が無くなると二人は死に化粧をして、朽ちた単発機に乗り込んで、
「さあ、これで街まで行こう」と。
単発機は滑走路をよろよろと進んでいくところで終わりますが、何やら特異で独特のムード、テンポがあり、興味深い作品です。そういう意味では、パゾリーニ作品に近い味わいがあると思います。
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