レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

「狼は天使の匂い」そして、ウサギは野を駆ける。ルネ・クレマン監督のメルヘン風フィルムノワール・・・

レタントンローヤル館にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「狼は天使の匂い」(1972)です。

 

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IMDb

写真家トニー(J・L・トランティニアン)は、軽飛行機事故でジプシーの子供を死亡させ、以来ジプシーから命を狙われる。米国国境に近い町で、彼らに狙われ、モントリオール万博会場で、殺人を目撃、殺した男達に捕まり、湿地帯にある古ぼけた家に連れられる。

そこにはチャーリー(ロバート・ライアン)と二人の女シュガー(レア・マッサリ)とペッパー、二人の子分リッツォとマットーニがたむろしており、何やら悪事を計画していた。

トニーはタバコを三本貰い、それを立てることで器用さを証明し、彼らのグループに加わった。

彼らの計画は、ある裁判の証人、警察が高層ビルに保護している、を誘拐することだった。上手く高層ビルに忍び込むことには成功したが、証人は既に自殺しており、仕方なく別の方法を考えるのだが・・・

 

巨匠ルネ・クレマン監督のフィルムノワールです。この映画が公開された時、名作「雨の訪問者」とは違い、少しばかりメルヘン風だったので一部の人からは不評でした。ほぼ半世紀を経て、改めて鑑賞するととてもユニークなフィルムノワール作品だということが判りました。

 

前回ご紹介した「ザ・コンサルタント」は怖いぐらいのフィルムノワールでしたが、こちらはルイス・キャロルの「不思議な国のアリス」のメルヘン風不条理さをまぶしたフィルムノワールなので、明るくのんびり鑑賞できます。スイッチを切り替えて、こういう犯罪映画を楽しみのも一興でしょう。

ロバート・ライアンは大変役柄に合っています。警官隊に囲まれ、警官隊に応戦するのではなく、トニーとビー玉を賭けあってチェシャ猫看板を撃ち合うシーンは、大変ユニークです。フレンチノワールの面目躍如です。

 

今回鑑賞したのは、デジタルリマスター版DVDで上映時間が約140分、劇場公開された時は120分強だったと記憶しています。実際、古いLDと比較すると、軽飛行機事故のショットがより細かくインサートされていたり、同様に子供のシーンも追加されており、よりメルヘン風な味わいになっていますが、全体の印象は変わりません。但し、古い映画のDB版より優れた画質に驚きました。

 

最後に、ペッパーを演じたティサ・ファローはミア・ファローの妹です。日本で公開されたのは彼女の映画は、B級作品を除くとこの作品と「マンハッタン」だけだと思います。                               八点鍾

 

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