レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「マラソンマン」(1976)です。
原作ウィリアム・ゴールドマン、監督ジョン・シュレシンジャーのこの映画、大変素晴らしいノワールスリラーだと思います。こちらは、ナチ戦犯は出てきますが、マンハントスリラーではなく、この映画の美点は、ディテールだと思っています。
ベトナム戦争で勝利を得られなかった米国、国家として人としてのモラルも荒廃し、当時NY市は財政破綻、だから街は汚く荒れ、年老いたドイツ人は貸金庫から何やら怪しげなものを別の人に渡す、そのドイツ人とユダヤ人のあおり運転、殺伐とした人間達、二人ともタンク車に激突し焼死。TVでは、ドイツ人は戦犯ゼルの兄とか。
コロンビア大学の学生ベーブ(ダスティ・ホフマン)はアベベ選手を尊敬している、兄(ロイ・シャイダー)は実業家して活躍しているが、パリでは謎の東洋人にワイヤーロープで殺されそうになる。が、東洋人を反対に殺害する。ベープは、図書館でエルザ(マルト・ケラー)と知り合い、愛し合うようになる。
ウルグアイに幽閉されていた戦犯ゼル(ローレンス・オリビエ)は、洗濯女に化けて米国に渡る。兄はニューヨークでゼルと会うが、ゼルの仕込みナイフで殺されてしまう。
兄の友人が、犯人を捕まえるため、組織が君に接触するので囮として協力してくれないかと言われ、ベーブは協力することに・・・
映画には、前述した以外にレッドパージ、公害デモ、空港荷物スト、健康増進のマラソン、ニューヨーク治安悪化等至る所に描かれており 、こういうディテールが映画のプロットを、それそのものはそんなに凝ったものではないですが、分厚くしています。
もう一つ、ローレンス・オリビエによる悪役ゼルの存在が不気味です。映画に出て来るオリビエってあまり感心することありませんでしたが、この作品のこの悪役ゼルは本当に素晴らしい。元歯科医なのでホフマンの歯をドリルを使用して拷問するシーン、ダイヤモンドストリートと呼ばれるマンハッタン四十七丁目を歩き回るシーン等とても存在感があります。
最後、ホフマンとセントラルパーク排水処理場で対決するシーン、
「ダイヤを呑み込め」と言われ、呑み込む時の古典的な演技、本当に驚きます。
撮影はコンラッド・ホール、印象的な音楽をマイケル・スモールが担当しています。
ゴールドマンは、この作品の続編を執筆しています。「ブラザーズ」と言い、死んだはずの兄が死んではいなくて、又活躍するストーリーだったと思います。
このブログ作成にBD版を鑑賞しています。 八点鍾