レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「シシリアン(完全版)」(1987)です。
あの「ディアハンター」(1978)の監督で、又「天国の門」を世紀の大失敗作(私はお気に入りの作品ですが)と評されて、以後4本程作品を撮り、2016年に亡くなられました。そういう意味では、才能はありましたが大変不遇な監督でした。
ハリウッドレッドパージ時に、エリア・カザン、エドワード・ドミトリク、脚本家ダルトン・トランボ等は大変な辛苦を舐めさせられ、その後の作品の性格が変わりました。
彼の場合も同様で、「天国の門」後の作品は、娯楽的要素が強くなりましたが、その中でこの作品は少し性格が違います。
その理由は、フランチェスコ・ロージ監督の「シシリーの黒い霧」の主人公、サルバトーレ・ジュリアーノを主人公にした興味深い作品だからです。
但し、この作品はマリオ・プーゾの小説「ザ・シシリアン」を元にしており、小説にはマイケル・コルネオーレが登場し、「ゴッドファーザー」番外編になっています。
本来なら、あまり面白くない「ゴッドファーザー Part3」はこの小説を原作にして方が面白くなったと思いますが・・・
映画は、シシリー、亡くなったサルバトーレ・ジュリアーノを追悼するパレルモの街を走るフィアット1500を運転するアドニス教授は刑務所に収監されているアスパヌ(ジョン・タトゥーロ)に会う。
映画は三年前の1947年にカットバックする。
ジュリアーノ(クリストファー・ランバート)とアスパヌは棺に小麦を入れて運んでいるところを憲兵隊に見つかり、逃亡中に撃たれるが修道院に隠れる。
ジュリアーノは傷が癒えると、憲兵隊に拘束されている山賊達を開放し、手下にして政府、富裕層から金品を強奪し、人民が土地を購入できるよう金を分け始める。
が、イタリア政府、ボルサ公爵(テレンス・スタンプ)、キリスト教宗教界、シシリー島のコーザノストラのボス、ドン・マジーノ達は黙って見てはいなかった。
当初は、戦後のドサクサの状態から勢力を伸ばしてきた共産党の反対勢力としてジュリアーノを利用しようとするが、上手くいかなくなるとイタリア政府を動かし、特殊部隊を投入、ジュリアーノを始末しようとするのだが・・・
ロージ監督「シシリーの黒い霧」程重く、薄気味悪さはありません。ハリウッド製なので雄大なシシリー島の風景をバックにお金のかかったスケール感のあるノワールスリラー、メロドラマになっています。
でも、あまり期待してご覧になるとチョット・・・
この映画でも紹介されていますが、ジュリアーノはライフ誌の表紙を飾ったこともあり、トルーマン大統領に手紙を送ったことあるそうです。但し、かなり現実離れ提案をしており、この辺りが彼の限界だったのでしょう。カリスマ性はあったと思いますが、残念なことに利用されるだけ利用されて消されてしまったということになります。
このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。 八点鍾
追記 完全版と劇場版は上映時間として25分程違います。完全版はジュリアーノとカミッラ公爵夫人の絡み、恋人ジョヴァンナの扱いが大きくなっています。どちらかと言えば、劇場版の方が面白いかもしれません。
チミノ監督は、次に「逃亡者」、この「必死の逃亡者」のリブートを撮って、殆ど映画界から消えた状態になり、2016年に亡くなりました。
本当は、ジンネマン監督のスペイン内戦後日談「日曜日には鼠を殺せ」をご紹介したかったのですが、DVDが行方不明なので、それは又別の機会に。