レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ミドウェイ」(2019)です。この海戦はよく映画化されています。オールスター映画松林宗恵監督「太平洋の嵐」、ジャック・スマイト監督「ミドウェイ」が良く知られていると思います。最近では「永遠のゼロ」にも描かれていました。
もうあらためてミドウェイ海戦について説明することはないでしょう。帝国海軍がミドウェイ島攻略と見せかけて、敵空母を誘い出し殲滅する処が暗号が一部解読されており、南雲艦隊がミドウェイ島攻撃に気をとられているうちに米空母艦載機によって返り撃ちに合い大敗北、以後帝国海軍は攻勢から防御専従というターニングポイントになった海戦でした。
映画は、空母エンタープライズ、マクラウスキー少佐(ルーク・エヴァンス)率いる第六艦爆隊隊長ベスト大尉、海軍情報部レイトン少佐(パトリツク・ウィルソン)を中心に進みます。ベスト大尉(エド・スクライン)は先任士官でタフそのものという男、冒頭のSBDドントレース艦爆着艦シーンでその性格が理解できます。このシーンは見ものです。
やがて、真珠湾攻撃から始まりますが、ここで空母エンタープライズのSBD艦爆機が今まさに真珠湾に到着する処、零戦に襲われるというシーンが加えられています。こういう些細な史実を加えてあるので、この映画はひょっとしたらと思ったら、その通り仕上がりになっています。
マーシャル諸島攻撃、ドーリットル中佐の東京空襲、そしてミドウェイと続き、この海戦の前に、あのジョン・フォード監督がミドウェイ島に到着するシーンがあります。フォード監督がこの海戦記録映画を撮ろうとしていたことは事実で、この映画でも僅かですが描かれています。
もう一つ、空母エンタープライズを発艦し、南雲機動部隊向けて進撃するマクラウスキー艦爆隊が進路を見失い、米潜水艦「ノーチラス」号を攻撃、その後機動部隊に追いつくべく航行していた駆逐艦「嵐」を見つけて、そのあとを追って機動部隊を発見するエピソード等ふんだんに盛り込まれています。
登場する軍用機は、ドントレース艦爆、デヴァステイター雷撃機、B-25、B-26爆撃機、零戦、97艦攻、96陸攻ほぼCGですが、その分考証は行き届いており、特にドントレースが素晴らしく、その発艦、着艦の描写は嬉しい程です。(現在でも、飛行可能なドントレースが存在しているので一部は実機を使用していると思います)
この映画を鑑賞するまで、米海軍は余裕で勝利したものと考えていましたが、残存機を集めて、空母飛龍攻撃に出撃する時、ブリーフィングルームに取り付けられた搭乗員割黒板には、殆どの搭乗員が行方不明、又は戦死になっており、おまけにベスト大尉のペア、通信士はもう出撃したくないと言い出す始末。
が、ベスト大尉は出撃し、空母飛龍の飛行甲板に直撃弾を食らわして・・・
空母エンタープライズでは、仲間が飛行甲板で後方を眺めてベスト機が帰投してくるのを今か今かと待っているシーンがとても切なくて。とても良いショットになっています。監督は「インデペンデンス・デイ」のローランド・エメリッヒ。 八点鍾
追記 日本側の考証については、空母赤城と飛龍がごっちゃになっている様な印象を受けましたが、一度の鑑賞では判りませんでした。
もう一つ 帝国海軍が米海軍に勝利するには、極めて簡単な事でした。戦力を集中すればよかったのです。その原則を守らなかったので敗北しました。
運命の五分間なんて全くの嘘で、アリューシャン作戦の空母龍驤、隼鷹をミドウェイ海域で運用していれば、米海軍の空母は全て海の藻屑となっていたことでしょう。