レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介するのは「スパイは今も謀略の地に」(2020)です。
今日は、映画ではなく作家ル・カレの最新作の紹介です。東西冷戦たけなわの頃「寒い国から帰ったスパイ」でエドガー賞を受賞し、この作品の成功を受け、彼は延々と御年八十代後半までこのエスピオナージスリラーを執筆しています。
特に彼の凄いところは、米ソがデタントになれば、パレスチナ問題、ソビエトが崩壊すれば、チチェン問題、ロシアマフィア、アフリカでの製薬会社の非合法活動、米国の特例拘置引き渡し等色々な問題を扱っているところだと思います。
彼以外のスリラー作家すべての作品を読んでいるわけではありませんが、こういう複雑なテーマを上げて執筆しているのは彼だけではないでしょうか?
この作品は、ブレグジットの英国を舞台に、四十代後半のSIS(英国情報部)に所属するナットは、趣味のバトミントンクラブで知り合ったエドの動きを調べるうちにある彼の秘密が浮かび上がる・・・
現在進行形の世界でのお話なので、ブレグジットのこと、プーチン、トランプの彼の思いが述べられているのが興味深い。
スパイとして生まれ、今もスパイで、おまけにスターリンの被害妄想も染みついている。毎朝目覚めると、西側の先制攻撃で痛い目に遭わされていないことに驚く男だ
プーチンについて 「スパイはいまも謀略の地に」より
昔の作品に比較すれば、全体にかなり丸くはなっていますが、悪を描く筆力は、まだ衰えていません。映画化されるかどうかは分かりませんが、興味のある方はご一読をお薦めします。
八点鍾