レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

「鳩の翼」時々、当ブログでも文芸映画を・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「鳩の翼」(1997)です。

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ヘンリー・ジェームズ原作の愛憎映画です。個人的には、苦手のジャンルで、こういう心理映画ってある程度齢を経ないと全く分からないジャンルだと思っています。

だから、「回転」の前日談で、ドロッとしたキツイ描写の「妖精たちの森」を除いて、「或る貴婦人の肖像」「金色の嘘」を鑑賞していますが、余り面白い作品ではないと記憶しています。いま見ると印象が変わると思いますが・・・

 

その昔、まだ二十代の頃、映画の勉強だと思い小津安二郎監督「東京物語」を鑑賞しましたが、本当に苦痛でした。四十代前半に鑑賞した時は、とても興味深く鑑賞出来ましたが。

 

映画は、1910年、ロンドン。貴族で有産階級だが、その資産を維持できないので伯母モード(シャーロット・ランプリング)が後見人になり、日々生活しているケイト(ヘレナ・ボナム=カーター)がd新聞記者マートンに地下鉄で逢うところから始まる。ケイトとマートンは互いに惹かれているが、マートンには財産がなく、結婚できない。

ある時、知人のマーク卿が米国の資産家ミリー嬢が英国に来る。そして、彼女は特殊な病気の為、余命幾ばくも無いことを聞きつけ、マートンとミリーを近づけて、その財産を相続させるため画策するのだが・・・

 

古臭い財産目当ての愛憎ドラマですが、これが良いですよね。本当に、まず伯母モードを演ずるシャーロット・ランプリング、資産家の男と結婚することが女の幸せだと言わんばかりの本当に嫌な女を演じています。巧いです。

だから、自分の好きな男に資産が来るようにして結婚しようと画策するケイト、マートンも煮え切らない男で、でも相手しているとミリーに情が移り、自分自身を嫌悪し始めて。

普通のサスペンス映画だと、ここで私立探偵とか変な奴が現れ、死体の山が出来るのですが、文芸作品ですから淡々と進みます。

 

ケイトの母は、貴族でありながら普通の男と結婚し、父が彼女の資産に手を出して絶縁状態で、貧困の中で亡くなっており、父は伯母モードの僅かな金で生活している状態なので、貧困がどんなものだか身に染みています。

墓地でケイトが母の墓石を洗うシーンがありますが、とても良いシーンです。私も時々やりますけど・・・

 

ロンドンのシーンもその時代色が良く出ていますが、ベニスに移ると更に素晴らしく、とくに夜の運河のシーンが。撮影がエドゥアルド・セラ(「真珠の耳飾りの少女」)。

 

多分、ケイトとマートンは結ばれるでしょう。色々な感情のわだかまり、しこりを残して。人生とはそういうものだから。又、世俗の垢にまみれるものだから。

 

イアン・ソフトリー監督のこの作品は、大変良く出来ています。鑑賞して損はありません。原作は900ページの長編だそうです。但し、この映画を鑑賞して小説を読みたいとは思いませんでした。

タルコフスキー監督「惑星ソラリス」を鑑賞したら、スタニスワフ・レム「惑星ソラリス」を読みたくなったので購入、読みました。

二つの映画には、この違いがあると思います。

 

このブログ作成にBD版を鑑賞しています。      八点鍾

 

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