レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「イノセント」(1976)です。
イタリア、ローマ。トゥリオ伯爵(ジャンカルロ・ジャン二ーニ)とその妻ジュリアーナ(ラウラ・アントネッリ)の中は冷え切っており、トゥリオはラッフォ公爵夫人(ジェニフアー・オニール)と密会を重ねていた。
ある時、弟とその友人、小説家のダルボリオが彼女の屋敷を訪ねて来て、深い仲に陥ってしまう。ジュリアーナは妊娠して、トゥリオはそのことを苦々しく思い、ジユリアーナは実家に戻り、そこで子供を産むという。
仕方なく、彼女がローマの邸宅で産むことを許すのだが・・・
イタリア映画界の巨匠ルキノ・ヴィスコンティ監督の遺作で、原作が何と耽美主義小説家ガブリエーレ・ダンヌンツィオ「薔薇小説」3部作「罪なき者」なのです。
ガブリエーレ・ダンヌンツィオとは、イタリア・ファシズム運動の先駆者で、第一次大戦後、イタリア・イレデンタの一部、フィウーメをパリ講和会議でユーゴスラビア王国に割譲することに決まったことに腹を立てて、イタリア人武装集団を率いて占領した、行動する政治家、その人なのです。
彼の起こした愛国政治運動と前衛芸術運動未来派が融合して、イタリアンファシズムが出来上がり、のちのドイツナチス党にも影響を与えました。
でも、この映画はそういう思想は見えていません。1894年に書かれた耽美主義的な愛憎小説を原作にしているのでその片鱗もありません。
作品は豪華絢爛、素晴らしい衣装、ロングドレス、首飾り、耳飾り、その大邸宅、椅子、ソファ、箪笥、インテリア、庭園、貴族社会風俗等格調高くこってりとした愛憎ドラマを濃厚な演出で撮り上げています。大した話はありませんが、ヴィスコンティが演出すると本当に息を呑むようなドラマになってしまいます。
ラウラ・アントネッリは、軽いセックスコメディ映画によく主演するセックス・シンボルですが、この映画ではまるで別人のよう、本当に美しい。腋毛を見せる濃厚な愛欲シーンを演じています。うーん、素晴らしい。
勿論、ジャンカルロ・ジャンニー二も素晴らしいですが・・・
彼の作品群の中でこの様な不倫劇を映画化したものは他にありませんが、個人的には、単なる豪華絢爛な愛欲メロドラマではなく、もう一つ何かが欲しいと思います。
折角、ダンヌンツィオの作品を映画化するのであれば・・・
このブログ作成にBD版を鑑賞しています。 八点鍾