レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「暴力脱獄」(1967)です。
私は、この映画を思い出すとき、別のある映画を思い出します。「セレンデイピティ」という映画で、主人公ジョン・キューザックが英国女性ケイト・ベッキンゼイルに自己紹介する時に、好きな映画は「暴力脱獄」と言います。女性でこの映画を鑑賞する人はいないのではないでしょうか? フロリダの刑務所が舞台で男だけしか出てこない男臭い映画なので。
まあ、そんなことは良いのですが。スチュアート・ローゼンバーグ監督のバディ・ムービィです。
映画は、ルーク(ポール・ニューマン)が酒に酔って、パイプ切断工具でパーキングメータを壊して、フロリダの刑務所に入所します。
刑務所では、道路工事が日課になっており、ほぼ毎日作業に出掛ける。初めは反目するドラグライン(ジョージ・ケネディ)だが、いつも冷静でどんなことにもたじろがないルークに一目置き始める。
ある時、死期がまじかな母が訪ねて来て最後の別れ言う。本当に素晴らしいシーンです。「ハスラー」「動く標的」「ハッド」「評決」等彼が見せる後悔と言うのか過去を悔やむ演技、人生を語る演技と私は勝手に言っていますが、こういうシーンは心に残ります。
やがて、母が亡くなり独房に入れられ、その後、何か悟ったように脱獄を繰り返し始める。捕まり、刑務所に戻され懲罰を受けるが、決して屈服しないルーク。泣きながら、もう脱獄しませんと言いながら、又脱獄。やがて、悲劇が彼に起こるのだが・・・
昔、鑑賞した時感じなかったのですが、全体に余り説明がない、意図的に省いている感じがします。ルークについては戦争で軍曹迄昇進しながら除隊時に二等兵になったぐらいの説明しかありません。
今回見直して、この作品、早過ぎたニューシネマということが判りました。不屈の英雄ルークは反体制のヒーローだから、アメリカの特定の世代がこの作品を支持しているのだと。
この作品、前半がいささかだるいが、母が面会に来るあたりから、がぜんテンポも良くなり冴えてきます。ローゼンバーグ監督の最高作と言って良いと思います。
その後「笑う警官」「新・動く標的」「さすらいの航海」等監督しますが、この作品を超えることは出来ませんでした。この作品に全てを出し切った感じです。
ラロ・シフリンの哀愁溢れるスコア、コンラッド・ホールの素晴しい映像、デニス・ホッパー、ルーク・アスキュー、アンソニー・ザーブ、ストローザ・マーティン、ハリー・ディーン・スタントン等の素晴しい脇役達とポール・ニューマンの魅力が上手く結合されて出来上がった奇跡の様な作品だと思います。
だって、ニューマンはネックレスに栓抜きを付けて演じているのです。普通だったら、只の馬鹿にしか見えませんが、彼がやっていると物凄くカッコイイから不思議です。
このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。 八点鍾