レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ポーラX」(1999)です。
フランスの新鋭レオス・カラックス監督(汚れた血、ポンヌフの恋人)作品です。これは、ハーマン・メルヴィルの小説「ピエール」を映画化したものです。メルヴィルと言うは名作「白鯨」がありますが、こういう作品もあるのですね。不勉強で知りませんでした。
J・P・メルヴィルは「白鯨」より先に英語でこの「ピエール」を読んでいたとインタビューに答えていますので、かの地ではかなり有名な小説のようです。
映画は、ノルマンジー地方セーヌ川畔の古い城館で母マリー(カトリーヌ・ドヌーブ)と暮らすピエール(ギョーム・ドパルデュー)は高名な外交官の息子であり、覆面小説家アラジンでもあり、カルト小説「光の中に」はベストセラー、まじかに恋人リシューとの結婚を控えていた。
ある時、東欧出身の異母姉イザベルが現れ、ピエールは父の過去を知り、家を出てイザベルを連れてパリに引っ越す。そして、真実の小説を書こうとするのだが・・・
前述したように重く、暗く、救われない映画です。若いピエールは苦悩するばかりで、その幼さ、拙速さを描いた作品のようですが、中盤から得体のしれない東欧系ロックバンド集団が登場し、射撃訓練等行われ、加えて移民流入による欧州下層移民に蠢くマグマの様な情念と言うか怨嗟の声と言うか、激しい怒り迄描き出され何とも言えない映画になっています。
こういうドロドロの情念を描いただけでなく、ある種の抑えきれないような激しい感情映画と言ってもいいと思いますが、どちらかと言えば嫌いではありません。この激しい感情がラストの悲劇を引き起こします。歪んだ家庭、隠された過去、セックス、暴力、移民の激しい怒り等が程好くまじりあって、この作品も観客を選びますが、とても良く出来た作品だと思います。
この作品はキューブリック監督遺作「アイズ・ワイド・シャット」公開の後、公開されました。「アイズ・・・」はセックスをテーマにした「ロリータ」の再チャレンジ作品の様でした。すこぶる洗練されたいい映画ですが、古臭いと思いました。
でも、この「ポーラX」は、汚く、暗く、粗削りですが、こちらの方が映画らしいなと感じたことを付け加えておきます。
このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。 八点鍾