レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

「フルメタル・ジャケット」スタンリー・キューブリック監督の独特な味わいのある戦争映画ですが・・・

レタントンローヤル館にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「フルメタル・ジャケット」(1987)です。

 

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完全主義者スタンリー・キューブリック監督のベトナム戦争を扱った映画です。この作品、構成が凄いと思います。約2時間の映画で前半約50分がパリス・アイランドにある海兵隊訓練キャンプでの新兵訓練になっています。

 

この映画は、グスタフ・ハスフォード著「ショート・タイマーズ(短期現役兵)」を原作としており、原作通りですが普通のハリウッド映画であれば、サラリと流すところスタンリーはコテコテに描写するんですね。ハートマン先任軍曹(R・リー・アメイ)のセリフが怖いぐらい。

 

この映画を見て、戦前の戦意高揚映画、山本嘉次郎監督「ハワイ・マレー沖海戦」(1942)とか今井正監督「海軍特別年少兵」(1972)を思い出すのは私だけではないでしょう。「ハワイマレー・・・」では、猛訓練をしてこそ戦果が挙げられ戦死してもそれは誉れということを、「海軍・・」では、年端もいかない兵士がこんなにひどい訓練を受けて、戦争は絶対反対というメッセージが込められていますが、「フルメタル・・・」は淡々と兵士を鍛えるということはと言う感じで。

 

一般に言われることで、戦争映画と言うジャンルは色々と誤解を生じます。反戦映画として制作したが、好戦映画と捉えられたりして。そして、淡々とその戦いを描写するのが、一番誤解されにくいと思われるので、こういうスタイルを取ったのでしょう。彼自身、戦争を描きたかったと言っていますし。

 

訓練キャンプの最終日にパイル二等兵がハートマン軍曹を射殺して自殺しますが、ジョーカー二等兵(マシュー・モディーン)は、海兵新聞星条旗の報道員としてベトナム、ダナン基地へ移動する。ここでナンシー・シナトラ「にくい貴方」がバックにかかり、これがまた素晴らしいの一言。

 

時は1968年1月30日の少し前、すぐに北ベトナム、NLFの攻勢が始まり、ジョーカー二等兵はフエ攻防戦の取材に駆り出される。相棒のラフターマンと共に。鉄兜に生来必殺と書き、胸にはピースマークのバッチを付けたジョーカー二等兵、笑えます。フエ市街地攻撃シーンでは、ステディカムを用いた移動撮影が素晴らしい。又、H-34ヘリ、M41軽戦車が登場するのもとても良い。

 

ニュース班の取材で、ジョン・ウェイン、アン・マーグレット、ラクウル・ウェルチ等出て来るところが時代を感じさせて、ジョーカー達はフエ占領地の偵察へ。

そして、Vz58アサルトライフルを持つベトナム女性狙撃兵の罠に落ちてクソ地獄まっしぐらと・・・

 

本当に良く出来た戦争映画です。兵士達を淡々と捉えているのが素晴らしいと思います。変に思想的なことを言わないのもいいと思います。戦争そのものを冷静に見つめている感じで。感情的な描写が多い「プラトーン」よりこの作品とかデ・パルマ監督「カジュアリティーズ」が好ましいと思います。

 

このブログ作成にBD版を鑑賞しています。       八点鍾

 

追記 

その昔読んだ原作には、ジョーカーとカーボーイとの出会いは、ダナン基地の映画館でジョン・ウェイン主演「グリーン・ベレー」を見終わった時だったと思います。映画「グリーン・ベレー」を揶揄してなかなか面白かったと記憶しています。「フルメタル・・・」になかったのは残念です。

もう一つ、このテト攻勢がこの戦争のターニングポイントになりました。サイゴンでは米大使館が襲撃されたり、カメラマンエディ・アダムスが撮影した解放戦線兵士を公開処刑した写真が全世界に配信されて、米国の継戦意志を削ぎ落したのは事実で、戦闘では勝利しましたが、政治戦略では大敗したと言って良いでしょう。

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