レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

「脱出」ジョン・ブアマン監督のアグレッシブな問題作でもあり、衝撃作でもあり、野心作でもある映画ですが…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「脱出」(1972)です。

 

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あの「ポイント・ブランク」「太平洋の地獄」「未来惑星ザルドス」のジョン・ブアマン監督作品、一番調子のいい頃の作品ですから大変良く出来ていますし、特に題材が凄いと思います。唐突の暴力で、男性が凌辱される映画なのです。たまたまリアルタイムで鑑賞しており、そんな映画とは知らずに見たので驚愕した記憶があります。

 でも、その後の展開がまた凄くて、予期できない暴力によって疑心暗鬼になり、4人が更に深みに嵌っていく。人間ってものすごく怖いな、その猜疑心。ヒチコックサスペンスとは違うサスペンスで、こういうサスペンスは見たことありません。原作はジェームズ・ディッキーの同名の小説。

又、カヌー下りですが、スタントなしで可能な限り主演の4人にやらせており、そういう意味でも気合の入った映画になっています。

 

演出の上手さで言えば、ブアマン監督の最高作と言ってもいいかもしれません。が、この年、アカデミー賞では「ゴッドファーザー」「キャバレー」がノミネートされていたので、無冠に終わりました。題材が題材なので嫌われたのでしょう。残念なことです。

 

 映画は、週末四人の男がダム建設で埋まってしまう渓谷をカヌーで下るために四駆でやって来るところから始まります。そこは山間の奥深いところで、住民は下界とあまり交流がなく、多くの住民は何やら遺伝性疾患を抱えている様子。こういう伏線を張る描き方はとても巧いと思います。又、「デュエリング・バンジョー」という曲の使い方も上手いと思います。

 

川下りは楽しく、自然を満喫する4人ですが、事件は翌日起こります。エド(ジョン・ヴォイド)とボビー(ネッド・ビューティ)が岸に降り立った時、猟銃を持った山男二人に襲われ、ボビーは凌辱されてしまいます。

「かわいい顔しているじゃないか?」と山男はエドに近づいてきます。

エドは観念して、正面を見据えるとルイス(バート・レイノルズ)がアーチェリーで山男を狙い、喉元を射貫き絶命させます。もう一人の山男は逃げてしまいます。

ここから、四人の運命が少しずつ狂ってきます。正当防衛だ、が後ろから矢を放っている、偏見の強い地元陪審員が参加するので有罪になる可能性が…

彼らは、仕方なく死体を隠して逃げることを選択します。ここはどうせダムの底になるのだから。が、逃げた男の仲間に襲われる可能性があるので、四人は必至で下流のエントリーの町まで逃げるのですが…

 

以前、このブログでも紹介したメリル・ストリーブ主演「激流」もラフティングを舞台にしていますが、あくまでもサスペンススリラーで、この作品の様に人の異常心理まで描いていません。

見方を変えると本当に嫌な映画でしょう。ブアマン監督は英国人なので、米国の山間の僻地を舞台に米国のドロッとした暗部を描いたこの作品、何と嫌みな映画を作るのだと思う人もいるでしょう。でも、物凄く現実味のある物語で、一度見たら忘れられない作品だと思います。

 

このブログ作成にBD版を鑑賞しています。      八点鍾

 

 

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