レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ミラノ、愛に生きる」(2009)です。
ティルダ・スウィントン主演、監督がルカ・グァダニーノ、そう「胸騒ぎのシチリア」「サスペリア」のコンビです。
映画は、雪のミラノから始まります。その音楽が良いんです。ミニマル・ミュージックの第一人者ジョン・アダムズの素晴しい映画音楽で。もうこれだけで楽しくなります。
ミラノの繊維業界の名門レッキ家、そのレトロモダンの邸宅では家長エドアルドが息子タンクレディを後継者にした。ロシア女性でその妻エンマ(ティルダ・スウィントン)は、何不自由ない生活をしていたが、息子の友人アントニオに会い、自分の中で何かが起こり始めた。
彼が所有する山の中のレストランテで、互いに求め合うようになり、夫も事業をインド人に売り渡して、息子エドは父親に失望してアントニオのレストランで、母と友人の裏切りの証拠を見て唖然として、繊維事業を買い取ったインド人を招待したディナーの席で悲劇は起こるのだった…
いつつも変な役を演じているティルダですが、今回はとても美しい人妻、ジル・サンダーとフェンデイで着飾った気品溢れる美人妻を。
お相手、アントニオはシェフ、彼が創作する料理はヌーベルキュイジーヌならぬヌオーヴォ・クチーナで、見て楽しむ創作料理で、加えて官能の味が。ミラノの街はとても美しく、アントニオと再会するサンレモの街も美しい。凝った構図、美しい映像、アダムスの美しいミニマル・ミュージック。うーん、美しいです。
この作品と比べると、ルカ監督は「サスペリア」は遊び過ぎです。こちらのスタイルが彼の持ち味だと思います。
但し、レッキ家の妻たちに少し冷ややかで残酷ですが。私はこの作品を見て、ヴィスコンティ監督「地獄に堕ちた勇者ども」、マル監督「ダメージ」、パゾリーニ監督「テオレマ」を思い出しました。何れも富裕一家が如何に崩壊していくかと言う作品ですが、味わいとしては「テオレマ」に一番近いかな。ヘンテコな映画でしたが、パゾリーニ作品の中では好きな作品です。
ラストの決別シーンも、理解を示してくれたのはLGBTの娘だけだったり。なかなか好いと思います。エンマの人生は大変でしょう。やがて間違いなくアントニオとの破局は訪れるでしょう。それから、彼女の本当の人生が始まると私は思いますが。
このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。 八点鍾
追記 この作品にはエンマの姑役でマリサ・ベレンソン(バリー・リンドン)が出ています。