レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

「海軍特別年少兵」"聖戦完遂は我らの双肩にあり、堅忍不抜の海軍魂を磨け"と言う悲しい映画ですが…

レタントンローヤル館にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「海軍特別年少兵」(1972)です。東宝8.15シリーズ最後の作品です。今回はレアな作品でヒットしなかったと聞いています。

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映画は、昭和18年、横須賀海兵団に14歳で入団して来た特年兵志願の少年達、身体検査、その激しい訓練の後、冒頭の標語の如く"聖戦完遂は我らの双肩にあり"、硫黄島島嶼防衛に駆り出され、その若い命を散らすまでを描く。

 

監督は社会派今井正、偶々この頃「あゝ声なき友」「小林多喜二」とこの作品三本をリアルタイムで見て、拷問描写一杯の「小林…」を除いてどちらかと言えば、この作品を推します。但し万人向けの作品ではありませんが。

この作品の見所は、その少年達の娑婆気を抜くための訓練描写でしょう。これは素晴らしいと言うか、凄まじい一言です。「ハワイマレー沖海戦」ではドキュメンタリータッチ、「人間の条件」「フルメタルジャケット」では一般徴兵者の訓練ですが、ここでは中学生ぐらいの少年を海軍精神棒、通称バッターで工藤教班長(地井武男)が殴る殴る。もう凄まじいです。若干バイアスが効く過ぎているように感じますが。

例えば、肉親面会日に、工藤教班長が面会人が来ていない練習兵に対して銃剣術練習を面会人達に当てつけの様にやり始めるところなんて、ちょっとね。

ラスト、上官が特年兵4名を捕虜とすべく給水所で待機させることで工藤教班長と対立シーンも上官が部下である教班長を押さえなくてどうしますかと思いますが…

練習兵達の家庭は、一応に複雑で恵まれていない。純真に皇国の為に身を捧げたい考えている少年、母への仕送り、姉を楽にしてあげたいと考えている弟、一族の名誉の為とか…でも、この辺りが門切り的というかよくある感じで一番つまらない。

ドジな特年兵を演じる中村まなぶがとても良い、昔の自分を見ているようで。佐藤勝の音楽、岡崎宏三のカメラ、ラストのパンフォーカス等とても素晴らしい。中でも、元特年兵の皆さんが指導したという訓練シーン、特に敬礼の仕方、力んだ敬礼ではなく、柔らかい敬礼が素晴らしい。

 

このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。     八点鍾

 

追記 この手の作品を紹介する時に困るのは、スチール等の宣伝資料の少なさです。良い作品なのでなるべく正確な紹介を考えているのですが。

もう一つ、海兵団近くの食堂で三國連太郎と小川真由美のシーンはとても良い。当時を知っているからこそできたシーンだと思います。これに比すると「硫黄島からの手紙」の憲兵エピソードは噴飯ものです。

 

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www.youtube.com    

                                          画質は良くありませんが…