レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「リリーのすべて」(2015)です。
世界で初めて性適合手術を受けた男性アイナー・ヴェイダーの映画です。この件は全く知りませんでした。かなりキワモノ映画かなと思いきや、とても良く出来ており、監督が「英国王のスピーチ」のトム・フーバーなのでその教養の一端が出ており、医学的アプローチが強い作品になっています。
映画は、1926年、デンマーク、コペンハーゲンに住む風景画家アイナー・ヴェイダーは妻ゲルタが製作中のダンサーの肖像画の為に足だけの代理モデルを引き受け、その絹のストックキングに触れ身に付けた時、何か特別な感じを受けた。
やがて、彼の中に"リリー"なる人格が現れ、女装を始めるようになった。当初は、男に戻ることがあったが、段々とエスカレートして女装のままになっていく。妻は、責任を感じ彼を医者に連れて行くが、性倒錯者とか精神疾患としか診断されない。
やがて、彼はドレスデンの著名な医者を訪ね診断を受ける。そして自分が性別不一致だと知ることになり、トランスジェンダーの外科手術を受けるのだが…
この作品を鑑賞しながら、「イブの三つの顔」(1957)を思い出しました。この作品は多重人格症に悩む女性の話でしたが、この作品では、アイナーは男性でしたが、現れた人格が女性だった。そして、その人格が男性であるアイナー人格よりも強く、彼はリリーと言う女性人格に支配され、手術を受け女性にと。
人格が変わる時、何がしかのシグナルが必要になり、この作品ではストッキングの肌触り、例えば、少し前紹介した「将軍たちの夜」ではゴッホの自画像、「サイコ」では母親の存在が危うくなると感じた時で、そう考えると、何やらこの作品とても怖いホラー映画の様に感じ入った次第です。本当に人間って厄介な動物だなと。尚、ゲルダをアリシア・ヴァキャンデル、アイナーをエディ・レッドメインが演じています。
このブログ作成にBD版を鑑賞しています。 八点鍾