レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

「リンカーン」合衆国憲法修正第13条を巡る狡猾、非道、容赦ないリンカーン大統領を描く作品ですが…

レタントンローヤル館にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「リンカーン」(2012)です。

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この作品、劇場で見ていた時正直ついて行けませんでした。スピルバーグ作品だから日本人の私でもリンカーン大統領について解り易く描かれているものだと勝手に思い込んで出かけたのですが。

この作品は、憲法修正第13条について知らないと物凄い退屈な、何を行っているのか全く分からない作品です。そういう意味でスピルバーグらしくない映画です。でも力作です。映画としては特殊な分野の映画で政治映画に分類されるでしょう。でも、米国人なら理解できるでしょう。反対に物足りないのかもしれませんが。その昔ピーター・ブルック監督「マラー/サド」(1968)という映画を鑑賞した時と同様な体験でした。

今回、BD版を見て時々停止させて、wikiで確認しながら鑑賞しました。こういう感じで鑑賞すれば、頭によく入り何とか鑑賞することが出来ました。

映画は、リンカーン大統領が政治生命を賭けて、この憲法修正第13条、すなわち奴隷制度廃止を、いかなる手段を使っても成立させたプロセスをじっくりと描写しています。説得、ロビイストによる買収、恫喝、こんな狡猾なリンカーン大統領は見たことありません。日本の学校では、もっともっと美化されたリンカーン大統領ですが。或る意味とても興味深い。と言うより先生の質の差もあると思いますが、自分でもう一度調べる必要があります。例えば、ニューディール政策など。

特に南北戦争の勝敗が決まり、南部連合の和平交渉団に対する扱いが興味深い。一度、勝利から遠のけば、対戦相手からの扱いはこんなものだと言うことが良く分かる。国際社会の非情さが良く描写されている。南北戦争死傷者約90万、フランス革命死傷者約100万、戊辰戦争死傷者約3万、最も欧米列強が参戦していたらもっと酷い結果になったものと思いますが。

ダニエル・デイ・ルイスが主演する映画は、何時も彼の演技に感心しますが、今回はそれがありません。というより、まるでそこにリンカーン大統領がいるようで。そういう意味では大成功しているのでしょう。

この憲法修正第13条が成立して奴隷制度は廃止されました。が人種差別は消えていません。それはここには書きませんが別の深い理由があるものと思います。

このブログ作成にBD版を鑑賞しています。      八点鍾

 

追記 「マラー/サド」とは、マルキ・ド・サドの演出のもとにシャラントン精神病院患者たちによって演じられたジャン=ポール・マラーの迫害と暗殺』というフランス革命を扱った映画のこと。傑作ですが…この作品もフランス革命に対して造詣が深くないと全く理解できない作品なのです。

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www.youtube.com

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マラー/サド