レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「デルス・ウザーラ」(1975)です。
この作品、巨匠黒澤明監督フィルモグラフィの中でも異色の一編と言ってもいい作品です。「トラ!トラ!トラ!」で降板した後、製作された「どですかでん」は良い映画でしたが一般受けせず、自殺未遂とか色々とありました。そんな時ソ連から話が持ち上がり、製作された作品です。
映画は、二部形式になっています。
第一部 1902年ロシアの探険家アルセニエフがウスリー地方探検時にゴリド人デルス・ウザーラと出会い、ガイドをお願いする。彼はこの地方での土地勘、知識が豊富でアルセーニエフとデルスが凍結したハンカ湖で天候が急変した時、彼の咄嗟の判断で、葦を集めて小さな野営小屋を作る。このシーンは迫力たっぷりで凄いの一言。こんな映画は見たことありません。
第二部 1907年再びアルセニエフがウスリー地区を探検することになり、デルスと再会する。再び彼をガイドにして任務を終えるが、前回とデルスは違っていた。年をとり、視力が弱くなっていた。
アルセニエフはデルスをハバロフスクの自宅へ向かえるが、都会の生活に彼は馴染めず、再びウスリーへ戻ると言い出す。アルセニエフは最新式の猟銃を彼に渡すのだが…
前述したように黒澤監督が一番大変だった時期に製作された映画にも関わらず、大変良く出来た映画になっています。特にウスリー地方の大自然描写がとても美しく、その画面から撮影が本当に大変だったことがほとばし出ていると言っても過言ではないと思います。私は、例えば森谷司朗監督「八甲田山」や、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトウ監督「レヴェナント:蘇りし者」と言う作品を思い出しました。
その昔劇場鑑賞時、やたら重い黒澤明らしくない映画という記憶でしかありませんでしたが、いやいや本当に素晴らしい作品であることを認識しました。
この映画の一番の難点は、カラー作品でありながら発色が良くないことで、それはモスフィルムの撮影機材が古いためだと思います。西側の撮影機材を使用していたら、素晴らしい作品になっていたと思います。主演はユーリー・ソローミン、マクシーム・ムンズーク等、撮影は黒澤組の中井朝一。
このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。 八点鍾
追記 劇場では70ミリ公開されましたが、DVDは35ミリ版とのこと。
探検家アルセニエフはその後1930年に亡くなったが、その家族は反革命的スパイ活動の罪でラーゲリ(収容所)送りになったそうです。