レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「動く標的」(1966)です。
ダシール・ハメット、レイモンド・チャンドラーに続く正統派ハードボイルド作家ロス・マクドナルド原作「動く標的」を映画化した作品です。
コルト・デイテクティブ・スペシャルを携帯し愛車ポルシェ356Aスピードスターを乗り廻す私立探偵ハーパー(ポール・ニューマン)が百万長者サンプソン誘拐事件を解決するハードボイルド映画と書くとカッコいいのですが、映画を見るとそんなカッコイイ物ではなく、仕事にあぶれ、妻とは別居中で離婚裁判中、弁護士アルバート(アーサー・ヒル)から紹介されたクライアントは意地の悪いサンプソンの後妻(ローレン・バコール)、愛車ポルシェはかなりの年季の入ったオンボロで一部プライマーが見えているし。
別居中の妻のみならず、サンプソン夫人、娘、保安官から嫌みを言われ、共犯の奴等からはボコボコに殴られるは、殺されかけるは。こんな悪条件の中でひたすら頑張るハーパーを見ていると、本当に何か元気づけられて…
ポール・ニューマン演じるこの私立探偵ハーパー、ハンフリー・ボガートが演じたサム・スペード、フィリップ・マーロウと同じくらい頭は回るが、少しシニカルで変なユーモアを持ち減らず口を叩く男、好いんですね、新しい私立探偵像を構築させて。
特にラスト、ハーパーとアルバートとの会話が素晴らしく、あのジョン・ヒューストン監督の名作「マルタの鷹」と同じくあのメアリー・アスターとボギーのラストのシーン、人生を語る映画になっていて、好きなんだな、このラストが。こういう映画と出会うから映画を見ることが止められない…
監督は「エアポート75」のジャック・スマイト、この作品が彼のベストだと思います。
原作はもっとサラッと書いてありますが、映画はもう少し丁寧に描写されており、この手の小説は、結構こういうラストが多いのですが、ロバート・アルトマン監督「ロング・グッドバイ」はそういうのが嫌いなのでしょう。まったく違ったラストになっていました。日本のハードボイルド作家、矢作俊彦、原寮さんもそういうスタイルですが、日本でも原寮氏の「そして夜は甦る」「私が殺した女」等映画して欲しいなと時々思っていますが。
このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。 八点鍾