レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

「怪談」小泉八雲原作をもとに小林正樹監督の異色作ですが…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「怪談」(1965)です。暑い暑い日本の夏ですから、こういう作品も良いかなと思い取り上げてみました。

小林正樹監督作品で初のカラー作品です。彼の作品は「人間の条件 三部作」「切腹」「上意討ち 拝領妻始末」「化石」「東京裁判」等があり、日本を代表する監督と言っても良いと思います。

映画はオムニバスになっており、第一話「黒髪」第二話「雪女」第三話「耳なし芳一の話」第四話「茶碗の中に」と言う構成になっています。第二話、第三話は皆さんも良く知っていると思いますので、ここでは第一話と第四話を簡単に記します。

「黒髪」京都に住んでいた侍が、困窮に負けて妻を離縁して国守として仕官した。家柄の良い娘と再婚して任地に赴くとその妻はわがままで冷酷であった。任期を終えると優しかった昔の妻の元に赴く。妻は温かく歓迎してくれたが、翌朝目を覚ますと彼は妻の屍の隣で寝ていた。

「茶碗の中」天和三年(1683)の事。中川佐渡守の家臣、関内は喉が渇いたので水を飲もうとして茶碗に水を汲み飲もうとした時、男の顔が写っていたのを認める。気味が悪かったが構わず飲み干した。夜勤をしている時、あの茶碗に写った男が現れ、彼は斬りつけた。男は闇の中に消えたが、ある夜彼の屋敷に三名の武士が現れ言う。

「主人は貴公に切りつけられ療養中である。来月十六日に恨みを果しに来る」と。関内は刀を抜き、彼らに斬りかかった…

この映画は怖くありません。強いてあげれば「茶碗の中」が一番怪談向きかなと思える程ですが。どちらかと言えば大学で東洋美術を専門に勉強したという監督の知性と言うか美術趣味がとても良く出た、幽玄的な作品になっています。

更に映画は商業映画ですが、かなり実験的なことを試みており、例えば作品はほぼ全編がセット撮影しており、「黒髪」では映画音楽の一部が音響効果の様な事をしており、「雪女」では空に目の様な物が漂い、異様と言うより不思議なシュールな、少し前衛的な前衛的な味わいを感じます。

特筆すべきは、音楽というか音響効果も含めて武満徹、撮影 宮島義勇、美術 戸田重昌、色彩美術顧問 碧川道夫と言うスタッフの素晴しさだと思います。特に武満徹の音楽は素晴らしいと思います。うーん、本当に美しいです。

このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。        八点鍾

 

追記 この映画は大作で、オールスター映画になっています、例えば仲代達矢、三國連太郎、岸恵子、新珠三千代、佐藤慶、滝沢修、田中邦衛、丹波哲郎、志村喬等。

www.youtube.com

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