レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

番外編 デビッド・リーンを偲んで

レタントンローヤル館にお出で頂き有難うございます。

本日は、デビッド・リーン監督の中であまり評価がされない「ライアンの娘」について。

 

私はこの映画がとても好きです。でも、なかなか見たいと思わなかった。オーバー3時間の映画で不倫物と聞いただけで劇場に足が向かなかった。意を決して、見始めるとやはりデビット・リーンの重厚なのタッチが随所に確認でき、不倫映画というより、もっともっと骨太の人生ドラマになっており、彼の前作「ドクトルジバゴ」より無理のない仕上がりでとても好感の持てるドラマだ。

 

ダブリン蜂起前後のお話で、第一次世界大戦戦場の非情さ、アイルランドの自然の美しさ、そして、これは本来であれば父親が娘を庇うところ、反対に娘を庇わずに逃げ、娘も父親の仕打ちを黙って受け入れる話だ。とてもつらいつらい話なのだ。

 

このデビット・リーン監督、これほどの巨匠でありながら女性の描き方が素晴らしい。ものすごくきめ細かいのだ。例えば、スタンリー・キューブリック監督作品を見ても、コンピュータ、宇宙船、登場する男優はとてもとてもきめ細かく描写するが、女性の描き方は通り一編だ。「バリー・リンドン」のマリサ・ベレンソンはこのサラ・マイルズと比較すればまるでお人形だ。黒澤明監督作品と比較しても同様だ。

 

「ライアンの娘」のロージー、「ドクトルジバゴ」のララ、「旅情」のジェーン等、現在、巨匠と呼ばれる映画監督で彼のような監督はいない。もう、彼がいなくなって30年程たつなんて。                          八点鍾

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ライアンの娘