レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

番外編「色戒/ラスト、コーション」愛憎の抗日エスピオナージスリラー

レタントンローヤル館にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「色戒/ラスト、コーション」(2007)です。

この映画、素晴らしいと思います。そう、アンドレ・マルロー「人間の条件」をベースにヒチコック「汚名」を足したような映画になっています。

1942年上海。映画の冒頭、汪兆銘政権高官の屋敷で四人の婦人が麻雀をしているシーンから始まります。そこに特務機関長イーが帰宅するシーンから始まります。麻雀仲間のマイ夫人は、4年前香港で国民党にリクルートされ、イーを暗殺しようとするが失敗、そのまま放心した様に再び上海に戻ったが、香港の時の仲間クァンが現れ、再び国民党間諜部にリクルートされる。仲間は再びイーを狙うのだが・・・・

まず、特務機関長イーを演じるトニー・レオンが素晴らしい。猜疑心が強く、用心深い男を上手く演じている。このような性格な男でないと生き残ることは出来ないだろうと観客を信じ込ませるほど名演だと思います。

彼は近づいてきたマイ夫人を罠だと思い、当初は結構乱暴に扱うのだが、心を許し始めると今度は激しく彼女を求め、その描写は特に憎々しく過激で生々しい。

イーは本当にマイに心を許してあるプレゼントをする。マイの仲間はその時に、イーを暗殺しようとするが・・・

少しだけ話すと「汚名」のようなエンディングではありません。もっと、暗くビター味の強いエンディングです。

多分、彼は国共内戦後も生き残って台湾辺りで静かに暮らしたことでしょう。彼を見ているとそう思えてきます。監督はアン・リー、台湾出身の巨匠です。どんな映画でも上手くこなすちょっと職人のようなところもあります。

マイ夫人を演じたタン・ウェイは新人です。なかなか見せてくれますが、間違いなくトニー・レオンに引っ張られて演じることが出来たものと思います。この映画が公開された時、ASEAN諸国ではその絡みのシーンが話題になったそうです。日本では全く話題にならなかったようです。又、大戦中の上海のセット等見所満載の映画です。

最後に、この映画は2007年ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞しています。このブログを作成するにあたり、DVD版を鑑賞しています。           八点鍾

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