レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「Mank/マンク」(2020)です。
この作品は、ノワールサスペンスの得意なデビッド・フィンチヤーが監督した脚本家ハーマン・J・マンキーウィッツの伝記映画です。不勉強な私は、最近まで傑作「市民ケーン」は天才オーソン・ウェルズが執筆したものと思っていた。「市民ケーン」はオーソン・ウェルズのワンマン映画だからですが。
でも、この作品を見るとシナリオ第1稿はハーマン・J・マンキーウィッツが執筆し、ウェルズが改編しているようです。ウェルズがどれくらい改編しているか分かりませんが。この作品の脚本は、監督の父親ジャック・フィチャーが書いています。
脚本家ハーマン(ゲイリー・オールドマン)は、同乗していた車の事故で治療終了後、ノースヴァード牧場に缶詰めになってオーソン・ウェルズの新作映画の脚本をすることになった。期間は90日だが、オーソンから電話が入り、60日だと言われた。まだ、90ページほどしか書きあがっていたなかった。
アシスタントは英国人のリタ、口述タイプ出来る専門家。が、夫はRAFのパイロット、英国はドイツと交戦中なので、時々夫のことが心配になる。
ハーマンは酔いどれ男。酔っては昔のことを思い出す。ハーストの愛人マリオンのこと、パーキンソン病で自殺した友人シェリーのこと、政治家シンクレアのこと、ハーストのこと、メイヤー、タルバーグのこと等々。
やがて、脚本が出来上がる。それは素晴らしい傑作だ。時間軸を打ち壊した今までにない脚本だったが、皆ハーストに喧嘩を売ることになるのでやめとけと。オーソンは凄い脚本だ、映画にするので俺がすべてかぶろうと。が、ハーマンはクレジットに出して欲しいと・・・
とても良く出来た映画です。大変興味深く鑑賞しました。でも、この作品少なくても「市民ケーン」という映画が映画史に置いてどういう位置づけをされている映画なのかを知らないとこの映画は苦痛以外の何物でもないでしょう。
個人的には、フィンチャー監督は「セブン」「ファイトクラブ」「パニックルーム」「ゴーンガール」の系列の映画を撮って欲しいと思います。この作品、「ソーシャル・ネットワーク」より好きですが、別にフィンチャー監督が撮らなくてはいけないような作品ではないと思います。
もう一つ、ハーマンはハーストのおかげで30年代の不況を乗り切れたのに、いくらマリオンの為とは言え、あの脚本を書き上げるとは。「市民ケーン」はハーストをモデルにしているとはいえ、描き方はかなり同情的な感じを私は持ちますが。
でも、日本人だとこういうことはあまりしないと思いますが。こういうところが日本人には良く分からないところですが。 八点鍾
追記
映画の中で、ハーマンはシンクレアがカルフォルニア州知事に落選したことを残念に思っているようですが、多分彼が州知事に当選しても不況を克服できなかったと思います。私も学校でニューディール政策が効果的だったと教えられましたが、実際は違ってあまり効果的ではありませんでした。
一番の効果は、日本海軍による真珠湾攻撃でした。これにより米国は物凄い財政出動を行い、大恐慌を克服することになります。口の悪い経済学者はウォーデールと言います。例えばミルトン・フリードマン(1976年ノーベル経済学受賞)は、超一流の経済学者なので「大恐慌を終わらせたのは、第二次世界大戦と軍事支出だ」と言っていますが。