レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「Arc アーク」(2021)です。
あの「蜜蜂と遠雷」、映像派技巧派の石川慶監督の新作です。編集も行っており、中々凝った映画です。加えて、不老不死をテーマにした作品なので期待していましたが、映画は大変良く出来ていますが、本格SFを期待していると当てが外れます。私から見ると老人問題を扱った映画のように見えます。
味わいは違いますが、あの「わたしを離さないで」(2010)という映画をご存知でしょうか? 映画はあのような雰囲気です。
原作はケン・リュウの同名の小説、中国出身の作家です。だから、不老不死なのですね。不老不死は反自然ですから、生物には死がなければ、生殖、色々な知識を伝える事も必要がありません。だから…
映画は、冒頭「プラスティネーション」という技術について説明から始まります。死亡後、血液を抜きそれを特殊な樹脂に置き換えることで、遺体をまるで生きているかのようにする技術で、リナ(芳根京子)はその技術をエマ(寺島しのぶ)から学びます。
やがて、エマの弟が樹脂ではなく特殊な細胞を血管から充填することで、人類は不老不死になる研究を成功させる。弟はリナと結婚し、リナは不老不死になる。
が、それは人類を二分し、つまり不老不死を選択するものと選択できないもの、に別けられるが、夫は遺伝疾患から死亡してしまう。
一人になったリナは、ある小島で老齢ため、経済的な問題から不老不死を選択できなかった人専用の施設で働き始めるのだが…
少しばかりグロいですが、前半のプラスティネーションと言う技術、この辺りの描写はなかなか面白いのですが、段々と老人問題に収束し始めて、最後も実のあるシーンも多く良く出来た映画ですが、私としては当てが外れたようで。でもSF映画ではなくて、ドラマとしては良い映画なので、興味のある方は、是非とも劇場で鑑賞して欲しいと思います。
こういう映画、宣伝が大変だと思います。映画の良さを簡単に説明しにくくて。良く出来ているのですが、SFではなく普通のドラマの様で、もう少しSFに焦点を絞るか、又は不老不死のテーマに上げながら、老人問題映画にした方が良いのではと感じました。
映画は、小説と違いお金がかかります。だからこそテーマ選びが大事なのですとサイレント時代の大女優リリアン・ギッシュが仰っていました。その通りだと思います。
八点鍾