レタントンローヤル館にお出で頂き有難うございます。今日は「ラストラン/殺しの一匹狼」を紹介します。
巨大な星条旗を背にして、パットンは言う。
「ナチ共のはらわたぶちまけて、引きずり回せ!」冒頭から物凄いセリフで、根っからの戦争屋を演じたジョージ・C・スコットは1970年のアカデミー主演男優賞を貰うことになるのだが、彼はそんなものに興味はなく、欧州イベリア半島でBMW503相手にエンスーをしているのであった。
この映画、冒頭のシーンから車好きには泣かせます。こんなシーン見たことないよな。丁寧にエンジン調整をしているシーンなんて。又、ジェリー・ゴールドスミスの甘いメロディが良いんだ。シーンが変わり、海辺のワインディングロード、又いいんだこのシーンが。撮影はベルイマン作品で有名なスヴェン・ニクヴィスト。
はっきり言うと、もうこれだけで十分すぎるのだが、運び屋のスコットは最後の仕事として、ある男の脱獄を助けることに、が、これが男の口封じのために脱獄させたことを知るや、男とその恋人を助けるために一肌脱ぐことに・・・
車はBMW503クーペ・カブリオレ、今ではコレクターズアイテムだが、趣味がいいじゃないか?メルセデス300SL、BMW507より佇まいが地味な503というところがね。加えて後付けのスーパーチャージャーまで備えて。これじゃ、当時どんな車も追いつけないぜ。
映画は1970年代の映画なので、所々にニューシネマの香りを残して、時々ロードムービィーの味わいも。特にいいのは、スコットが男の恋人の部屋に入ると、洗面台には恋人のストッキングが洗濯されたまま。仕方なく綺麗に洗い、干すシーンがいい感じ。
スコットの主演作品としては軽いほうだが、私のお薦めは「博士の異常な愛情」「パットン大戦車軍団」そして「海流の中の島々」。
BMW503は当時経営不振だったBMWを立て直すことが出来なく、クヴァント家に支援を頼み、1500"ノイエ・クラッセ゛市場に出し経営は回復。色々なことを思い出してくれるこの作品、大作ではないがキラリと輝く逸品だ。監督はリチャード・フライシャー。
八点鍾