番外編「相続人」 フィリップ・ラブロ監督 渾身の傑作・・

レタントンローヤル館にお出で頂き有難うございます。本日ご紹介する映画は「相続人」です。

今年のカンヌ映画祭のパルム・ドームはボン・ジュノ監督「パラサイト」でした。今から約半世紀前の1972年のパルム・ドームはフランチェスコ・ロージ監督「黒い砂漠」とエリオ・ペトリ監督「労働者階級は天国に入る」(日本未公開)でした。

ロージ監督の「黒い砂漠」はイタリア国営石油公社総裁エンリコ・マッティの飛行機事故を扱った社会派映画であのマカロニウェスタン雄の ジャン・マリア・ボロンテがマッティを熱演しました。このマッティは石油資本に喧嘩を売っていたことで有名な人物で映画はドキュメンタリー風でやはり何がしの知識がないと見ずらい映画でした。

この「相続人」も巻頭、飛行機事故シーンから幕を開けます。父親のビジネスジェットが事故を起こし、その息子バート・コルデール(ジャン・ポール・ベルモンド)が急遽米国から呼び戻され、コルデールグループの総帥に。

彼は、父親の死に疑問を抱き、私立探偵を雇い調べさせます。コルデールグループの製鉄部門を買収したいという話を聞き、その仲買をしたマイヤール弁護士に会いに行き、その買収先を聞き出そうとします・・・

ラブロ監督の「相続人」は、まず編集にとても凝っており、セリフを少なくし、アルジェリア戦争のエピソード、ラクビーのシーン等とてもうまく纏め上げ、いいリズムになっています。又、フランスに到着すると彼のドキュメンタリー映画を作るという撮影班が現れ、シネ・ヴァリテ風に進行していくのも上手い。

車の扱い方もよく、彼の車は真紅のジャガーXJ6、公用車はシトロエンDS、イタリアではアルフェタ18001aを殆どフルスロットルで走り回る。

当時、欧州に彼が描いたような極右のような政治団体が存在するのかとか、彼の妄想とか言われましたが、現在の欧州状態を見るとあながち間違いとは言えないでしょう。

バートを襲う暗殺グループによるXJ6のシーンはカットの繋ぎが巧みで、もう一つ記者デルマスの部屋で襲われるシーン、彼が記者として従軍したベトナム戦争の記念品で窮地を脱出する。なかなかです。おまけに、彼の部屋に飾ってある著名人の写真、この扱い方がもっと上手い。

ラブロ監督は前作「10+1の追撃」もとても良い佳作であったが、今回は作品のスケールが拡大し、テーマの選び方も良くなってきて、今後の成長を期待されましたが、その後「潮騒」「危険を買う男」とまずまずの作品が日本に入って来たのみで、80年代には作品が日本に全く入ってこなくなった。残念である。

ベルモンドは一皮むけたような好演で、「勝手にしやがれ」「モラン神父」「いぬ」と並ぶ作品。音楽は、ミシェル・コロンビエ。エッジが利いたフレンチジャズ風の音楽もすこぶるいい。共演はシャルル・デネー、ジヤン・ロシュホール。

女優陣は日本では余り馴染みのない人ですが、カルラ・グラヴィーナとモーリーン・カーウィン。ともに美しく、カルラはシングルマザーとしてさらりと演じておりいいとても感じ。

「黒い砂漠」とよく似たテーマを扱った映画ですが、こちらはとても粋な上質なサスペンススリラーに仕上がっています。

なお、本ブログを執筆するにあたり配信にて本作品を再見していることを追記します。

                                  八点鍾

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カルラ・グラヴィーナとモーリーン・カーウィン

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J・P・ベルモンドとシャルル・デネー

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