レタントンローヤル館にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「刑事マルティン・ベック」(1976)です。
この映画が公開された時、話題になったのは冒頭のニーマン警部の殺害シーンだった。カーテンの陰から覗く眼、銃剣が取り出され、ニーマンの腹を裂くと一人称カメラになり、自分の血で転ぶ両足が映し出される。このリアルな描写に一部のファンは驚愕した。勿論、スプラッター映画のようにどぎつくなく、抑制されている。今見ても素晴らしいシーンだ。
映画は丁寧に捜査の過程を描写していく。殺されたニーマンはデモ破り等を得意とする暴力刑事で、その昔ある事件が浮かび上がってくる。後半は、犯人が自動小銃、ライフル銃、拳銃等を持ち込んで建物の屋上に陣取り、警察官を標的に撃って撃って撃ちまくる。武装警官を載せたヘリコプターもいとも簡単に撃ち落としてしまう。
マルテン・ベック刑事はハリー・キャラハンのようにスリムでないので、どたどたと屋上に上がり犯人と対峙しようとするが、物音を聞かれた犯人にあっさりと喉元を撃たれてしまう。ここの描写もすごく、傷口からの出血がベックの呼吸に合わせて、流れ出すのだ。そう、このスーパーリアリズムにはサム・ペキンパーも蒼ざめるに違いない。
とはいってもカット処理はハリウッドにかなわなく、ちょっとのんびりしているかもしれないが、スーパーリアリズム描写が補って余りあると思う。
監督はボー・ヴィーデルべリ、「ジョー・ヒル」「みじかくも美しく燃え」が知られていると思います。音楽はビヨン・イェーソン・リンド、個性的な音楽で素晴らしい、ベックはカール=グスタフ・リンドステッド、コルべリはスベェン・ヴォルター、ラーソンはトーマス・ヘルベリ等、殆ど日本では知られていないスウェーデン俳優です。なお、この映画の原作は、マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールーの「唾棄すべき男」です。
本ブログを作成するにあたり、DVDを鑑賞しています。 八点鍾