レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

番外編「恐怖の報酬(ソーサラー)特別編」(1977)完全版は完全でしょうか?

レタントンローヤル館にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「恐怖の報酬(ソーサラー)特別編」です。

この映画は1978年に日本で公開されていますが、その時は上映時間100分程度の短縮版で公開されました。それ故、評価はあまり芳しいものではありませんでした。完全版は昨年11月24日に公開されました。

 

あらすじは、この映画自体がH・G・クルーゾの名作「恐怖の報酬」のリメイクです。

石油採掘所で火災が起き、その火災を消火するためにニトログリセリンを採掘所まで運搬する話です。大まかなあらすじはクルーゾ版と同じですが、細かいところではかなり違っています。クルーゾ版は沙漠を舞台にしていましたが、この作品はジャングルです。登場人物も殺し屋(フランシスコ・ラバル)、テロリスト(アミドゥ)、投資家(ブルーノ・クレメル)、ギャング(ロイ・シャイダー)と少し渋い配役ですが、加えて前半30分位かけてしっかりと描いています。

 

短縮版は、この辺りがバッサリとカットされていますから、食い足らないサスペンス映画になっていました。この作品は、その辺りががっちりと描写されていますので、ジャングルの中の吊り橋のシーンも、密林に横たわる巨木の爆破シーンも、テロリストの襲撃のシーンもサスペンスたっぷりです。独創性では、クルーゾ版に劣りますが、サスペンスではほぼ同等の作品になっていると思います。

 

このブログでも紹介した「エクソシスト2」、「ビリー・ザ・キッド21才の生涯」と同じようにウィリアム・フリードキン監督とスタジオ側で何かしらのトラブルがあったものと思われます。トラブルがあるとそれ以後やはりスタジオ側とギクシャクし、その後良い映画を作ることが出来なくなります。残念なことです。

 

そういう意味で、ハリウッドは大変きびしい処で、ここでずっと生き抜いていくことは本当に大変なことだと思います。長く活躍しているのはスピルバーグ監督とリドリー・スコット監督ぐらいじゃないでしょうか?

 

でも、ハリウッドは映画関係者にとって魅力的なところで、あのエイゼンシュタイン監督も日本の黒澤明監督も映画製作をしようとしました。いずれも作品は陽の目を見ることはありませんでした。

 

私は、以前「トラ・トラ・トラ」の黒澤明氏のシナリオを読んだことがありますが、現在、BD版で流通しているものと細かいところでかなり違っており、このシナリオ通りに製作したら物凄いスケールの映画になったものと思います。映画館の大スクリーンで見たらすごいだろと思いましたが。

 

さて、この特別編ですが、私は少し不満です。短縮版にあって特別編にカットされているシーンがあります。それは、凸凹の道をハイスピードで飛ばして、振動を殺すシーンがバッサリとカットされているのです。いいシーンなので、やはり復活して欲しいと思います。

 

最後に、原題ソーサラーとはテロリストと投資家が運転するトラックの名前です。音楽はタンジェリン・ドリームが担当していて、地獄の深淵から洩れてくるような独特な音作りに成功していると思います。                  八点鍾

 

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一番の見せ場 吊り橋シーン

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