レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

「異邦人」ヴイスコンティ監督がカミュの不条理小説を映画化した作品ですが・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「異邦人」(1967)です。

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原作はアルベール・カミュの有名な不条理小説です。版権の問題でしょうか、この作品DVD等で映像化されなかったのでもう鑑賞することは出来ないと思っていた処、偶然の気まぐれと言うのでしょうか、今月デジタル上映していたので鑑賞することが出来ました。

 

プロットを簡単に記すと、主人公ムルソー(マルチェロ・マストロヤンニ)が、養老院に入っていた母親が亡くなり、無神論者の彼が涙も流さず、翌日マリーと関係を持ち、映画を見て、友人達と遊んでいるところで、絡んできたアルジェリア人を撃ち殺す。

裁判で、動機を尋ねられると「太陽が眩しかったから・・・」と答えて、死刑判決を受け、広場でギロチン刑に処されるというお話です。

 

あのヴイスコンティ監督作品なので期待していました。「揺れる大地」「山猫」「若者のすべて」等彼のキャリアから鑑みて、かなり凄い作品なのでは思いましたが、鑑賞して彼らしくない作品だなと思いました。

まず、ナレーションが多い作品で、アラブ人を射殺するシーンにもナレーションが入るのですね。確かに、映像化しにくい作品だろうと思いますが、一番の肝となるシーンにナレーションとは。

 

もう一つは、その昔、評論家津村秀夫氏がこの作品を評して、まずマルチェロ・マストロヤンニがミスキャストだと書いていたことを思い出しました。そうですね、彼のフェイスが甘すぎて、テーマがぼやけてしまったようにも思います。日本人ならずとも彼を見て、彼の魅力が全開の「昨日 今日 明日」「ああ、結婚」を思い出すことでしょう。深刻ぶっても何か嘘っぽくて。

だから、彼が「太陽が眩しかったから」と言ってもセリフが浮いている感じがします。

 

個人的には、ラストに司祭として出て来るブルュノ・クレメールと役を取り換えた方が良いのではと思いましたが。

映像化しにくい小説なのでしょう。そう思います。アルジェリアは植民地と違い、海外県に近い扱いだったと聞いています。そういう事も知らないとこの映画は理解できないのかもしれません。

 

とぼけた弁護士(ベルナール・ブリエ)なんか馬鹿丸出しで、彼なんか法廷戦術間違えていますよね。ムルソーも「太陽が眩しかった」なんて馬鹿なことを言わず、奴が先にナイフを抜き、襲い掛かろうとしたと説明すればよかったのに。

マリーを演じたアンナ・カリーナもとても可愛いく、こんな彼女は始めて見ました。

 

アルジェリア物であれば、少し前バンド・デシネで見たカミュの短編「客」の方が映像化しやすいのにな・・・

 

でも、色々と書きましたが良い映画なので、この機会にこの作品を鑑賞して欲しいと思います。画質は思ったほど良くありませんでしたが。           八点鍾

 

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