レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「スローターハウス5」(1972)です。
この作品は、ニューシネマの代表作「明日に向かって撃て」(1969)でブレークしたジョージ・ロイ・ヒル監督が、映画化したい題材を好きなように映画化した作品の様に思えます。原作はカート・ボネガット・ジュニアの同名の小説です。
恥ずかしいことにこの映画を見る迄、私はドレスデン大空襲(死者数約13万5000人)について何も知りませんでした。
作品は、多分に実験的で反戦映画だが反戦を叫ばす、戦争映画だがSF仕立てという一風変わった作品になっています。そう、まったく同じとは言いませんが、アラン・レネ監督のアルジェリア動乱を描いた「ミリュエル」(1963)のように、人によっては分かりにくい作品です。
1944年末、ルントシュテット攻勢で、ワッフェンSSに捕らえられ捕虜となった兵士ピルグリム(マイケル・サックス)は、ドレスデンに護送される。途中、彼は捕虜になった米兵の脚を踏み、その米兵はそれがもとで死亡したとその兵士の戦友ラザロはピルグリムを恫喝する。必ず殺してやるからなと。
ドレスデンに到着すると、先の大戦の軍服を着た老将校と少年兵で構成された兵士たちに導かれて屠殺場5号に到着する。
「ここが君たちの兵舎だ」老将校は言う。
「シュラハト・ホーフ・ヒュンフ(屠殺・場・5号)と覚えろ」と付け加えた。
数日後、ピルグリム達はドレスデン大空襲を体験し、生還した。
戦後、彼は検眼士の職を得てアッパーミドルクラスとして成功した。飛行機事故で大けがを受けたが回復した。娘は結婚して幸福な生活を送っている。息子は一時期グレたが、兵士となってベトナムで活躍している。
但し、妻は彼が飛行機事故を起こしたとき、愛車キャデラックで彼が入院している病院に駆け付けようとして事故を起こして死亡してしまった。
その後、彼は自分の意識がドレスデン、ルントシュタット攻勢、捕虜収容所、トラファマドール星での生活と時空を超えていくことが出来るようになったことに気付くのだった。だから、未来においてラザロに撃ち殺されることを予期し、モンタナ嬢とトラファマドール星での甘い生活も・・・
凝った編集の映画ってありますよね、例えば「未来惑星ザルドス」とか「ブレイン・ストーム」、テレンス・マリックの映画等々、この作品は、時に美しく詩的で、又乱暴に編集されてなかなか面白いムードを醸し出しています。
そういう雰囲気の好きな人にはお薦めの映画と言って良いでしょう。とても面白い映画だと思います。そうでない人には、良くいって只の実験映画、又は何のことかさっぱりわからないということになるのかな。私は好きな映画の一つですが。
そして、もう一つ、この映画の音楽をグレン・グールドが担当しています。伝説のピアニスト、演奏会を開かないピアニスト、うーん何といったらいいのでしょうか?
このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。 八点鍾
作品が少し古いのでいい映像がありませんでした。申し訳ありません。