レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日は映画の紹介ではなく、小説を映画化する時に監督によるアプローチの違いを説明したいと思います。
最近、自分の私物を整理していた時に、グスタフ・ハスフォードの『短期除隊兵』を見つけました。この小説は有名な「フルメタル・ジャケット」の原作です。
この小説、素人っぽいタッチの物凄い簡潔な描写で、そうですね、その昔、レイモンド・チャンドラーを読んだ後に、ダシール・ハメットを読んだ時に似たような感想を持ちました。後で知ったのですが、文体の簡潔さがハメット小説の味でした。でも、ハメットの場合、やはり小説家の作品だと思いました。
が、グスタフのこの小説は粗削り過ぎて、日本であれば出版されないように感じます。でも、キューブリックにとっては良い材料だったと思います。
映画化する場合
①小説を映画化する場合忠実に映画化する 例、「ハンニバル」「ジャッカルの日」等
②監督が小説の味を上手く残して映画化する 例、「裏切りのサーカス」等
③監督が好きなように映画化する 例、アルトマン監督「ロンググッドバイ」
キューブリック監督の場合、あくまでも私の印象ですが③のように感じます。
この小説は、第三部構成になっていて、
第一部 銃剣の魂 新兵教育 映画の前半
第二部 殺害戦果 フエでの戦闘 これも狙撃兵との闘い
第三部 歩兵たち 熱帯雨林での敵狙撃兵との闘い
となっており、映画の後半は、二部と三部をごちゃ混ぜにして作っています。戦闘時の描写は強烈で、女狙撃兵は撃ち殺されて、アニマルマザーがナタで首を切り、部屋の隅に放り投げたり、ジョーカーを助けたカメラマン助手はぼんやりして戦車に轢かれて即死、熱帯雨林での狙撃兵との戦いは、映画とは違い撃たれた兵士をジョーカーが撃ち殺して、分隊共に脱出すると言うラストになっており、映画より更に重いラストになっています。
小説を読むとキューブリックは好き勝手映画化したという印象です。スティーブン・キングが怒りたくなるのも理解できます。
この小説の場合、そのまま映画化するとかなりグロテスクな作品になると思います。そう考えると、まあうまく料理した作品だと思いますが…
あくまでも個人的な意見ですが、小説の映画化は②が一番かと… 八点鍾
キューブリックとダイアン・ジョンソンが「シャイニング」を脚本化した時のことが説明されています。ご参考までに