レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「落下の解剖学」(2023)です。
グルノーブルから離れた山荘で夫が不可解な転落死、妻であるドイツ人作家サンドラ(サンドラ・ヒュラー)が容疑者として検察から起訴される。その裁判を巡る映画です。
裁判映画はあまり好きではないので、どちらかと言えばパスしがちですが面白いという評判なので鑑賞しました。いや、とても面白い良い映画でした。というより、とても勉強になりました。私にとって知的好奇心をくすぐる作品でした。
映画の構成は、ちょっと不可解な転落死としながら、後頭部の打撲痕、血痕の飛沫、息子が弱視になった経緯、バイシェクシャル、作家として妻の成功、その経緯、そして転落死前日の夫婦喧嘩の録音が登場して…妻サンドラが段々と不利になっていく経緯が良いですね。
このトリエ監督、意地が悪いですね。でも、とても巧いと思います。そして、このサンドラを演じたサンドラ・ヒュラーが本当に巧いですね。感心しました。
ヴァンサン弁護士を演じたスワン・アルローも良いですね。"裁判は真実を争う場ではない、貴方が誠実な人柄を持っていることを参審員に印象づけることだ"というセリフも良い。そうなんですよね。うーん、美しいです。
サンドラは英語は話せるがフランス語は日常会話程度で、勿論通訳はいますが、やはり自分の口から話すのと、通訳を通して聴くのでは印象が悪い感じが出ており、こういう些細なところを描いた映画って無かったように思います。いや、勉強になりました。
日本でもこの手の事件はあり、最近では元講談社社員妻殺人事件があります。この映画を見ていて思い出しました。よく似ています。
この映画では、"疑わしきは被告人の利益"と言うラストになりますが、日本の事件は色々あり、現在、高裁差し戻しと言う処ですね。
この作品面白いので興味を持たれたらぜひ鑑賞して下さい。勉強になります。 八点鐘
追記 私個人の想像ですが、サンドラはほとぼりが冷めたら子供を連れてフランスを出るでしょうね。息子は成人したら母親から離れて暮らすことでしょう。
それは、母サンドラが収監されると第三者に預けられるのでああいう発言をしたように私は感じました。頭の良い息子の様なので。