レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

「地獄に堕ちた勇者ども」ヴィスコンティ監督の異色作・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「地獄に堕ちた勇者ども」(1969)です。

イタリア映画の雄ルキノ・ビィスコンティ監督の作品です。この作品は、フィルモグラフィの中でも異色な作品になっています。
彼は元々ネオリアリズモの作風作品「揺れる大地」辺りから頭角を現し、その後「夏の嵐」で彼独特の重厚なスタイルを確立したと思います。

その後、彼でなければ製作できない「山猫」「熊座の淡き星影」「異邦人」「ベニスに死す」「ルードヴィヒ」「家族の肖像」「イノセント」と続きます。
この作品は、ナチスが政権を取り始めた1933年の国会議事堂放火事件、そしてヒトラーが憲法を停止独裁を確立、邪魔になった突撃隊(SA)を粛清するする事件(長いナイフの夜)辺りまでをクルップ財閥(映画の中では、エッセンベック財閥)との協力とその醜聞を描いた異色というより異端、退廃、近親相姦、小児愛等悪徳のすべてを網羅しており、それこそノワール色の濃い映画になっています。
ナチスの犯罪を描いた映画は多くありますが、例えば「シンドラーのリスト」など沢山ありますが、財閥とナチスのどす黒い関係を描いた作品はこの映画だけでしょう。

物語は、シェクスピア「マクベス」辺りをモチーフにしていると思れ、エッセンベック男爵の誕生日パーティから始まります。そこにエッセンベック財閥重役フリードリッヒ(ダーク・ボガート)と親衛隊大佐アッシェンバッハ(ヘルムート・グリーム)が現れます。やがて、国会議事堂放火事件が伝わり、晩餐会はお開きになり、ヘッセンベツク男爵の死が告げられ、次期社長ヘルベルトの拳銃が証拠として提出され、ヘルベルトは国外逃亡、代わりにフリードリッヒが社長になります。

アッシェンバッハは策士で、国防軍には機関銃を配備するが、治安組織の一グループの突撃隊には必要ないとして、国防軍と突撃隊の確執を煽り、一族の中で突撃隊員コンスタンティンがフーリドリッヒの義理の息子が小児性愛者で少女の自殺に関係している感づくとフリードリッヒはアッシェンバッハに相談に行きます。彼は一案を講じ、ミュンヘンに終結した突撃隊員を親衛隊が粛清しようと・・・
と凄まじい事件となっていきます。

当時、戯曲「わが友ヒトラー」を書き上げていた三島由紀夫は、この作品を褒めたたえた。民主的な政治形態が独裁的な政治形態に変貌するには、まず左側を粛正し、続いて右側も粛正する。そして、大人しい中道を支配しつつ独裁を進めると。そういう意味で大変政治的な映画であるとともに、色々な示唆を与えてくれる映画です。
主演者は全て素晴らしいが、特にヘルムート・バーカーとイングリット・チューリンが素晴らしい。上映時間は157分と長く、ビィスコンティの重厚な演出なので鑑賞するのが、大変ですが前述したようにその価値は十分ありますし、とても良く出来た政治映画の一つとして、又教養としても鑑賞されることをお勧めいたします。  
このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。    八点鍾

追記
軍部と財閥の関係を描いた映画に山本薩夫監督「戦争と人間」という作品があります。架空の伍代産業と満州関東軍参謀石原莞爾が色々と謀略を練り、天皇から奉勅命令を賜ろうとする映画でした。
なお、K国では同じように大統領自ら政治形態を変換して、統一国家を形成しようとする動きがあるようなので・・・。

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