レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「キー・ラーゴ」(1948)です。ノワールスリラーの巨匠ジョン・ヒューストン監督の戦後復帰第二作目になります。
映画は、フランク(ハンフリー・ボガート)が戦死した部下の家族に会う為にキー・ラーゴにに行き、その家族が営むホテル・ラーゴにギャングの大物ロッコ(エドワード・G・ロビンソン)がある取引の為居座っていた。ハリケーンが近づいてきたので、取引が出来なく、イタリア戦線で戦功をあげたフランクは只々臆病風に吹かれたようになにもしない・・・
今回丁寧に鑑賞して、気付いたことが二つあります。
フランクはイタリア戦線、モンテ・カッシーノの戦いに従軍してこと。ここは、約半年の間物凄い激戦が行われたところで、例えば、仏映画「いのちの戦場」というアルジェリア戦争を舞台にした作品があります。劇中、ある古参兵士が軍服を脱ぐと、わき腹に物凄い傷があります。
「カッシーノでドイツ軍と戦った時、弾薬が切れて銃剣で格闘した時の傷だよ」と。
ヒューストン監督は先の大戦で陸軍に徴集され、報道班で働きイタリア戦線でドキュメンタリー映画を製作しています。戦後の作品は、その時の体験が反映されているのでしょう。カッシーノでの体験は壮絶だったので、もう争いごとは御免だという煮え切らない態度をとるのだと思います。
もう一つはロッコの性格描写。意地の悪い、ねちっこい性格には驚きました。まるであのマカロニウェスタンの悪役ジャン・マリア・ボロンテの原点がここにあるようです。
そういう意味で、この作品は70年程前に製作された映画とは思えないほど、登場人物がギラギラしています。脚本はリチャード・ブルックス(冷血)とヒュースン自身。
ラストの小型船でのガンファイトも、とてもリアルに出来ており、彼フランクはこの経験を通してPTSDを克服していくことになるのでしょう。
ローレン・バコールはとても綺麗ですが、特にこの作品では見所はありません。クレア・トレーバーは中々芸達者なところを見せてくれます(アカデミー助演女優賞受賞)。前作「黄金」と共にヒューストン監督の作品中人間描写に秀でた映画だと思います。
ブログ作成にBD版を鑑賞しています。このBD版は画質、音質とも良好で、うれしい一編になっています。 八点鍾