レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「オデッサファイル」(1974)です。
「ジャッカルの日」で名を上げたフレデリック・フォーサイスの次作が、この作品になります。「ジャッカルの日」は、OASに雇われた殺し屋ジャッカルによるド・ゴール大統領暗殺をパリ警視庁ルベル警視がいかに防ぐかという一本調子のストーリですが、大変面白い小説でした。
対して、この「オデッサファイル」は、エジプトの対イスラエルミサイル兵器開発、イスラエル諜報機関、ユダヤ人収容所から生き残ったユダヤ人問題、ナチ戦犯支援組織(オデッサ)、サイモン・ウィーゼンタール、主人公ピーターの戦死した父親、これにケネディ大統領暗殺が絡み、なかなか重層なプロットに仕上がっています。
個人的には、色々な要素が絡み合ったプロットが好きなんです。だから、久しぶりに鑑賞したら、大変楽しめました。そりゃ、巨匠フレッド・ジンネマンの前作には及びませんが、丁寧に作られたこの作品、公開当時も余り高い評価を得ることはありませんでしたが、「ポセイドンアドベンチャー」をヒットさせたロナルド・ニーム監督、正統派サスペンスタッチでなかなかの腕前を見せてくれます。
この作品、ユダヤ人問題ではなく私怨なのです。物語の鍵は、ロシュマン(マクシミリアン・シェル)がリガの港で射殺する国防軍大尉、柏葉付騎士鉄十字章者、このエピソードが後になって効いてくるのです。
原作好きな人は、どうしてピーター・ミラー(ジョン・ボォイト)がジャガーXK150Sでなく、メルセデス220Sカブリオレを乗り回すんだという方もいるかもしれませんが。そんなに大きな問題ではないと思います。なかなか良いチョイスだと思います。
原作のラストのみ改変することで(ピーターがイスラエル情報部に拘束されるまでが長いこと、ラスト原作ではロシュマンはピーターに殺されることなく逃亡するが)、うまく纏めていると思います。
次作「戦争の犬たち」は、原作を大きく改変したので、特に前半、戦争準備のプロセスを省略したので、フォーサイスファンは落胆したことでしょう。日本未公開「第四の核」を除いて以後、彼の小説は映画化されることはありませんでした。
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