レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ばるぼら」(2020)です。監督は手塚治虫の実子、手塚眞。
ブログ等で色々な批評を読んで鑑賞したので、私はこの作品、結構楽しむことが出来ました。
でも、少しだけ感想を述べると、もう少し上手く嘘をついて欲しいと。
映画そのものが、極論すれば嘘の塊で、それを観客にいかに真実らしく見せるのが監督の腕の見せ所と思います。
例えば、小説家美倉(稲垣吾郎)が新宿で、ばるぼら(二階堂ふみ)を拾い自分のマンションに連れて来るシーンがあります。私はこの部屋を見て、もっと上手く嘘をついてほしいと。
少し、全体にこだわりが足りないのでは? もっとセンスのある所を見せて欲しいと思います。お酒と万年筆だけでなく、こういう細かいところから映画は始まりますので。
物語は、「マノン・レスコー」から始まるファム・ファタールですよね。トリフォ監督「暗くなるまでこの恋を(1969)」(ウィリアム・アイリッシュ『暗闇へのワルツ』)、特にルイ・マル監督「ダメージ(1992)」を参考に女性をもっと綺麗に撮って欲しいと思います。個人的には、ジュリエット・ビノッシュはこの作品が一番美しいのではと思っています。さすがルイ・マル監督です。
まあ、なんやかんや言っても男なんかこんなものです。惚れた女には弱いものです。
簡単に奈落の底に落ちてしまいます。落ちて楽しんでいる男も・・・
二階堂ふみ、結構頑張って演じていると思います。裸体、その肌、絡みの時の手の位置、下着等こだわりを持って撮って欲しいと思います。
撮影監督がクリストファー・ドイルと一流にもかかわらず、意外と平凡なのも気になります。彼らしくありません。彼が感じた21世紀の東京を表現して欲しかったと思います。
橋本一子の音楽は、クリストファ・コメダ(ロマン・ポランスキー監督の初期作品の映画音楽家)風、不気味なジャズ音楽はとても良いと思います。
監督自身が編集を行っていますが、もっと凝ってもらうと更に良くなるのではと思います。
バジェット、スケジュール等全責任を負う監督は大変だと思いますが、めげずに頑張って、少しでも良い作品を創り上げて欲しいと思います。 八点鍾
追記
興行成績もまずまずと聞いて安心しています。