レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「冷血」(1967)です。
トルーマン・カポーティが1959年米国カンザス州で起こったクラター一家4人惨殺事件を丹念に取材した小説を映画化した作品です。監督はリチャード・ブルックス、「雨の朝巴里に死す」「カラマーゾフの兄弟」「熱いトタン屋根の猫」等を映画化しているので文芸派監督と言っていいでしょう。多分、この作品が一番優れていると言う人が多いと思います。この作品もスタイルから言えば、アメリカン・ニュー・シネマと言っていいと思います。
映画は、事件を引き起こすペリー・スミス(ロバート・ブレーク)とディック・ヒコック(スコット・ウィルソン)事件前夜の描写から始まり、事件後カンザスシティでの小切手詐欺とメキシコへの逃亡、或る情報提供から逮捕、取り調べ、裁判、死刑囚としての生活、1965年に死刑執行されるまで淡々と描写して行きます。特にラストのショットは、従来のハリウッドでは考えられないものになっています。
特筆すべきは撮影監督コンラッド・ホールの陰影が効いたモノクローム撮影、社会最下層と言っていい彼らの生活環境、家族構成を寒々した日々をとても上手く描写しています。加えて、クインシー・ジョーンズのまるで現代音楽の様なジャズスコアーがこの作品を更なる価値のある映画に引き揚げていると思います。あまり見たくないタイプの映画ですが、何度再見しても新たな発見がある映画になっていると思います。
味わいは違いますが、同様な映画にアベック二人を惨殺した殺人犯を描いた「デッドマン・ウォーキング」、日本映画では緒形拳がサイコパス殺人者を演じた「復讐するは我にあり」があります。特に「復讐する…」は監督が今村昌平なので、ラスト父と妻が、遺骨を画面に向かって散骨するシーンは、物凄い迫力で一生忘れることが出来ないと思います。
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