レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

「ナポレオン」アベル・ガンス監督の素晴らしい実験的無声映画巨編…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ナポレオン」(1927)です。

フランスのアベル・ガンス監督作品「ナポレオン」を1983年にフランシス・フォード・コッポラ監督が配給し日本で東京、大阪、名古屋等で公開した版をDVD化した作品をご紹介します。上映時間は約4時間弱という長尺です。当然の如く、サイレント映画でモノクローム作品です。画質は全体に良好ですが、あまり芳しくないところもあります。

でも、鑑賞後83年に実際に鑑賞した時と同様な感動が蘇りました。感涙と言う言葉がぴったりの素晴らしい映画です。

一般に、ナポレオン映画と言えば、だいたい「戦争と平和」のような作品とか「ワーテルロー」のような作品が多いのですが、この作品は違います。

1783年ブルエンヌルシャトーの陸軍幼年学校から始まり、まだ少年のナポレオンですが雪合戦で相手側を圧勝し天賦の才を見せます。やがて、フランス革命が起こり、あの有名な「ラ・マルセイエーズ」を聞き、「これは多くの大砲を得たのと同じです」と呟くシーン、トゥーロン包囲戦を経てテルミドール9日のクーデター、ジョセフィーヌとの出会い結婚、そしてイタリア遠征までをガッチリと描いています。

特に、イタリア遠征に出かける前に夜国会議事堂に入り、目の前にフランス革命の指導者ダントン、ロベスピエール、マーラーが現れ、自由、博愛、平等の精神を他の国々に拡大させると誓うシーンが美しい。感涙です、このシーンは。

映画は多分に実験的で、高速カット、クローズアップ、手持ちショット、ロケーション撮影、移動撮影、マルチカメラ、多重露光、フィルム着色、分割画面と当時存在するありとあらゆる技術を駆使しその極め付きはトリプル・エクラン(ポリビション)と言う3台の映写機を使用するワイドスクリーンでしょう。イタリア遠征軍がナポレオンの指揮の下、前進するシーンが映し出されて映画は終わります。画面は左から青、白(未着色)、赤に着色されたフィルムを映写してそれがフランスの国旗を表して、本当に素晴らしい作品になっています。古い作品なので観客を選びますが、興味を持った方は是非ご覧になることをお勧めします。何がしか得るものはあると思います。

サイレント映画にも素晴らしい作品があります。例えばD・W・グリフィス監督「国民の創生」「イントレランス」セルゲイ・エーゼンシュティン監督「戦艦ポチョムキン」フリッツ・ラング監督「メトロポリス」「ニーベルンゲン」等と同列の作品と言っていいでしょう。                            八点鐘

 

追記 今年スコット監督「ナポレオン」が公開されるので、その予習と言う形で鑑賞しました。いや、愛知県体育館で見た時と同じ感動が… 好い映画って良いですね。

ご存じだと思いますがキューブリック監督も「ナポレオン」を企画していたことがあります。「ワーテルロー」が興行的に失敗したので「バリーリンドン」に変更したとか聞いています。

 

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