レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

「インフェルノ」ラングストン教授シリーズ第3弾は、パンデミックスリラー・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「インフェルノ」(2016)です。

 

「ダ・ヴィンチ・コード」から始まるラングストン教授シリーズ第3弾は、パンデミックスリラーとして幕を開けます。

イタリア、フレンツェ。細菌学者で大富豪のソブリストは、何者か追われバディア・フィオレンティーナ教会の尖塔に昇り、飛び降り自殺するところから始まります。

 

ラングストン教授は、インフェルノ(地獄篇)の幻視を見てうなされているが、気が付くとフレンツェの病院にいる。そんな時、婦人警官をやってくるのだが、行き成り介護士を射殺するやラングストンを射殺しようとするが、女医シエナ(フェリシティ・ジョーンズ)の機転で脱出に成功。シエナのアパートで、スーツにあったバイオチューブを見つける。それは小型のプロジェクターになっており、画家ポッテイチェリの描いた「地獄の見取り図」が映し出される。

その絵をヒントにあれよあれよという間にヴェッキオ宮殿のダンテのデスマスクにヒントがあるとヴェッキオ宮殿に行くと、デスマスクは無く、監視カメラの映像を見ると昨日、ラングストン教授が盗み出しており、又病院を襲ったあの婦人警官も追いかけてきており・・・

 

冒頭、おどろおどろしい地獄図から始まり、いきなり警官に化けた殺し屋からの脱出劇、「地獄の見取り図」をめぐる謎解き、ヴェッキオ宮殿、特に500人広間の天井画の屋根裏での追跡、ヴェネツィア、イスタンブールと観光映画のように移動します。

自殺したソブリストが「インフェルノ」というウィルスを世界中に拡散して、調和のとれた社会を創り上げようとするのを止めようとラングストン教授、WHO(世界保健機関)の追跡、民間危機管理会社「コンソーシアム」も複雑に絡み合って良質な娯楽作品となっています。

ラスト、イスタンブールで古代の貯水池『イェレバタン・サラユ』でのクライマックスが盛り上がないのが少し残念です。

 

ブログ作成にBD版を鑑賞しています。    八点鍾

追記

コンソーシアムの責任者を映じたイルファーン・カーン氏は先月29日に53歳にて亡くなりました。ここに謹んで追悼いたします。

 

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IMDb

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イルファーン・カーン氏









 

 

「メカニック」AMAT VICTORIA CURAM (Victory loves preparation /周到な準備が成功を導く) を信条にしているストーンキラーのお話ですが・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「メカニック」(2011)です。

この作品はマイケル・ウィナー監督(追跡者、狼よさらば)の「メカニック」(1972)のリブートですが、思いのほか良く出来たノワールアクションだと思います。監督はサイモン・ウェスト。

 

アーサー・ビショップ(ジェイソン・ステイサム)は非情な殺し屋。"周到な準備が成功を導く"を信条に依頼者からのオーダーを手際よくこなしていく。ニューオリンズ近くのバイユーにある高床式豪邸に住み、高級オーディオでシューベルトのピアノ三重奏曲第2番変ホ長調 作品100、D929(バリー・リンドンにかかっていた音楽です)を聞き、ジャグァーEタイプクーペをレストアしている。時々、ニューオリンズでサラと激しく求めあう。但し、終わればクールそのもの。

仕事の依頼は、PCにメカニック募集とメールが入る。古びたモーターボートとピックアップでニューオリンズに行き、作戦開始となる。

 

ある時は、麻薬王をプールで手際よく事故死させ、またある時は友人で恩人であるハリー(D・サザーランド)も殺害する。ハリーには息子がいるのでやむなく、一緒にこの仕事をすることになる。

 

が、ハリーは手際が悪く、最初の標的はやっとのことで始末しするが、カルト宗教教祖殺害は二人で壁の中に隠れて、タイミングを見て殺害しますが、ナットを落として、銃撃戦になるが脱出に成功。

逃亡中、ハリー殺害の原因となった暗殺チームのメンバーが生きていたことが判り、すべての依頼者デーンの嘘と分かり、デーン殺害を計画するのだが・・・

 

前述したように、思わぬ拾い物という作品です。テンポが良く、アーサーの性格描写も良く、銃器の冷たい描写も光っています。最後のデーン殺害は中々の迫力で、ペキンパー映画を見ているようです。ちょっとメルヴィルの「サムライ」を思い出しますが、やはり違いますね。

 

ブログ作成にBD版を鑑賞しています。            八点鍾

 

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www.youtube.com

「ハンニバル・ライジング」ジャポニカ風B級映画の芳香とグロ味のノワールスリラー・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ハンニバル・ライジング」(2007)です。

この映画はトマス・ハリス氏によるハンニバル・レクターシリーズ第四作「ハンニバル・ライジング」の映画化作品です。監督はあの「真珠の耳飾りの少女」で名を上げたピーター・ウェーバーです。

 

映画は1944年のリトアニアから始まります。東部戦線で独軍の戦線崩壊が始まり、貴族レクター家は、居住レクター城から山中の別邸に避難しますが、そこにソ連軍が現れて上空を旋回していたスツーカGタイプ(対戦車攻撃タイプ)とT34戦車の戦闘に巻き込まれ、レクター一家はハンニバルと妹ミーシャが残される。

 

がそこに武装親衛隊海外義勇兵グループの敗残兵グルータス達(リス・エヴァンス)に襲われる。食料が欠乏し、グルータス達はミーシャを殺し・・・

 

戦後、ハンニバル(ギャスパー・ウリエル)は孤児としてレクター城に監禁されていたが脱走し、叔父のいるフランスに逃亡する。そこでレディ紫に会い、日本文化に触れ、特に武術を学び始め、まずはレディ紫(コン・リー)を人前で侮辱した肉屋ポールを血祭りにあげ、そして憎きグルータス達の消息を調査して、復讐を始めるために、リトアニアに再び舞い戻るのだが・・・

 

「レッドドラゴン」から始まるこのシリーズ、特に「ハンニバル」辺りからグロ味が増してきますが、特にこの作品は日本文化がそれに複座に噛み合って、なかなか面白いというかコメディのような作用が醸し出される感じがします。

 

フランスの大邸宅で剣道の練習とか、勿論日本刀、鎧兜、頬当、大坂の陣の蒔絵等、興味深いが何か違和感を感じるのは私だけでしょうか?

ウェーバー監督は、残虐味を押さえていますが、例えば、前作を監督したスコット監督ならもう少し残虐味を加えて、上手く料理するのではと思う次第です。

とは言っても、戦後のフランス、パリの雰囲気もまずまずですし(監督はメルヴィル作品を意識した)、赤を印象的に配した最後のハウスボートでのハンニバルとグルータスの対決も良く出来ていると思います。

 

と色々書きましたが、ジャポニカ風味でまぶした、B級映画の芳香とグロ味を兼ね備えた異色のノワールスリラーになっています。好きな人はたまらないでしょう。

トマス・ハリス氏の新作「カリ・モーラ」の邦訳も出ており、又この小説も映画化されることを願っています。

 

ブログ作成にDVD版を鑑賞しています。

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IMDb

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「ONCE ダブリンの街角で」低予算、短期間という条件で制作されたラブロマンスの佳品・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ONCE ダブリンの街角で」(2007)です。

 

スケッチ風に撮られた作品ですが、丁寧に作られた佳品です。DVDについていたメイキングでは、製作予算12万ユーロ、撮影日数17日、隠し撮りで警官が来るときはカメラを隠して撮影していたとか。

 

映画は、ダブリンのストリートでタカミネのギターで弾き語りをしている男(グレン・ハンサード)と男の音楽に惹かれてきたチェコ移民の女性(マルケタ・イルグロヴァ)のボーイ・ミーツ・ガールです。

冒頭、ギターケースに入ったお金を盗まれ、犯人を追い駆けるシーンから中々笑わせてくれます。彼の持っているタカミネのギターはピックガードがなく、そこが擦れて大きな穴が開いているという代物、男の家が掃除機修理屋と知ると彼女は掃除機を持ってきて、掃除機をゴロゴロと引っ張ってくる、何とも言えない面白さ。

チェコ女性もピアノを弾くので、二人で一緒に弾き始める辺り、又、男の親父のバイクで一緒に海辺に出掛ける辺り、ロンドンに行くためにデモテープを作るためにレコーディングする辺り、奇跡が起きたようにというより、偶然の気まぐれというより、神の見えざる手が働いたかのように、本当に素晴らしく撮影、編集されて、とても素晴らしい作品になっています。

 

アイルランド映画と言うと、ニール・ジョーダンとかジム・シェリダンの映画を思い出しますが、こういう映画もあるのですね。監督はジョン・カーニー、この映画で使用された「Falling Slowly」は2007年度アカデミー歌曲賞受賞しています。

低予算で映画を撮りたい方は、この作品は色々な意味で参考になるのではと思います。

 

このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。          八点鍾

 

追記 DVDについていたメイキングでは、東京映画祭にもこの両名は出席されて、ミニコンサートを披露しています。勿論、あのギターで。ところが、タカミネの社長が現れて新しいギターをプレゼントしています。とてもとても微笑ましいシーンでした。

 

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「ローマ、愛の部屋」ちょっと小粋で特異なラブロマンス、加えてスペイン映画ですが・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ローマ、愛の部屋」(2010)です。この映画は劇場公開されなくて、ビデオスルーされたと聞いています。

 

この作品は、「アデル、ブルーは熱い色」と同種の映画です。LGBTをテーマにしていますが、「アデル、ブルー・・・」ほど重くないので、又上映時間も110分程度と短いのでその点気楽に楽しめます。少し変わっているのは、場所がローマのホテルの一室、カメラは部屋から出ることはありません。登場人物は正確には数名ですが、ほぼ二人と言っていいでしょう。以前このブログで紹介したアンソニー・シェーファー「探偵/スルース」程凝った作品ではありませんが、これはこれで面白い作品になっています。

 

映画は、夏至のローマ。深夜、バーで知り合った二人の女性、スペイン人アルバ(エレナ・アヤナ)に誘われてロシア人ナターシャ(ナターシャ・ヤロヴェンコ)は彼女の部屋に入る。彼女は自分はレズと告白して関係を求めるのですが、やがて寝入ってしまう。こっそりとナターシャは部屋を抜け出すが、携帯を忘れて又部屋に戻ってしまう。お互いに生まれ、生い立ちを告白する。

そして、最後に、アルバはナターシャに告白してしまうのだが・・・

 

こういう内容なので、二人はほぼ全編全裸で出てきますが、映画はかなり抑制して撮影しています。勿論、絡みのシーンもありますが、こちらも抑制気味のトーンで演出しています。

監督はフリオ・メデム、私はこの監督の作品は初めてですが、脚本も担当していて良く出来ていると思います。今までに20本程度の実績もあるので、スペイン映画界では中堅のベテラン監督と言ったところだと思います。

 

このブログ作成に、DVD版を鑑賞しています。         八点鍾

 

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IMDb

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「ブルーレクイエム」現金輸送車をめぐるフレンチノワール・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ブルーレクイエム」(2004)です。監督ニコラ・ブークリエフのフレンチノワールです。

 

プロローグ、郊外を走る現金輸送車、後ろを走るBMW 。その瞬間、現金輸送車が炎に包まれる。

 

ある日、アレックスと言う男が現金輸送会社ヴィジラント社を訪れ、面接を受ける。危険な業界なのでなかなか人が集まりにくいので、アレックスは即日採用され、仕事に就く。彼の前職は銀行関係で、ここに来たのも何やら理由がありそう。

仲間はまあいい奴だ。この会社は余り業績が良くなく、来年米国の大手企業に買収されることになっていた。仕事は大手が敬遠する地区の小口現金輸送を扱っており、武装グループの襲撃はそう多くないが、それでも数件受けていた。

 

アレックスは近くの安ホテルに宿泊して、フロントに決して部屋の掃除をしない様に申し入れる。部屋の壁には色々な資料を張り付けるアレックス。

時々、昔の記憶が蘇る。子供とBMW7シリーズに乗っていて前を走っている現金輸送車を追い抜こうとした時、路上の爆発物が爆発して、車は路肩へ。男達が現金輸送車を襲い、男の銃口、そうアレックスは私怨による復讐の為この会社に来たのだった・・・

 

小品ですが、なかなか面白いフレンチノワールです。良く出来ています。前半が少し退屈ですが、昔の記憶が蘇る辺りからエンジンがかかり、映画はフルスロットルとなります。

 

特に、武装グループが現金輸送会社を襲撃するシーンは中々良く出来ています。アレックスは自分で訓練していますが、やはり普通の人なので、銃撃を受けたり、ためらったりと大変なので・・・

主演はアルベール・デュポンテル、ジャン・デュシャルダン等。この監督、最近は作品が日本にあまり入っていないので、現在の様子は分かりません。

 

ブログ作成にDVD版を鑑賞しています。        八点鍾

 

追記 ハリウッドではこの作品のリブートが準備されており、監督がガイ・リッチー、主演がジェイソン・スティタムと聞いています。

 

 

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「コンテイジョン」劇場公開された時は、殆ど顧みられなかったのですが・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「コンテイジョン」(2011)です。

 

新型ウィルスの感染症とそのパニックと収束までを描いた映画で、テーマがテーマだけにこのような映画は余りありません。少し前このブログで紹介したワイズ監督「アンドロメダ・・・」に次ぐ力作です。監督はスティーブン・ソダーバーグ(セックスと嘘とビデオテープ、トラフィック、チェ)、主演者はオールスターで、マット・デイモン、ローレンス・フィッシュバーン、マリオン・コティヤール、ケイト・ウインスレット、ジュード・ロウと演技者を揃えています。

 

映画は、香港から帰国したベス(グウィネス・パルトロー)が発熱、意識を失い病院に緊急搬送されるが、あっけなく病死。続いて継子のクラークも病死する。同じ頃、東京でもバスの中で会社員が倒れる。同じことがロンドンでも起こる。東京での事故映像を新聞会社に売り込もうとしていたアラン(ジュード・ロウ)はそっけなく断られる。

アトランタでは、これはバイオテロではないかとCDCのチーバァー博士(ローレンス・フィッシュバーン)に国土安全保障省の職員が接触し始めるのだが・・・

 

現在進行形のコロナウィルス禍と同様の展開で、鑑賞していると恐ろしい程リアリティかあり、同時にクラスター、基本再生産数とかテレビ、新聞、ネットで飛び交っている専門用語がバンバンと出て来ます。そういう意味でリサーチが行き届いて、とても良く出来た映画になっていると思います。

映画は2002年に発生したSARSウィルス禍をもとに作られている思われますが、2011年劇場で鑑賞した時はガラガラだったことを記憶しています。

 

映画はさらに、感染防止のための地域封鎖、CDCと製薬会社の関係、アランのようなネットでの情報発信者の問題、CDC幹部職員の情報庇護等色々を問題を提起しているのが素晴らしい。

このウィルスの基本再生産数が4.0の為、全世界で2600万程亡くなったところで映画は終わりますが、現在進行中の経済問題、ウィルス禍の第2波、第3波については触れていません。いまから100年前のスペイン風邪では第3波迄あったことが記録されています。

 

現在、高橋洋一先生の動画によれば、日本政府は基本再生産数を確か2.5として感染防止対策を行っているので人との接触を8割下げることを目標にしているとのこと。

 

皆様は、コロナウィルスに感染しない様に予防施策を守って、健康で過ごされることを祈っております。

なお、このブログ作成にBD版を鑑賞しています。もう一つ追記しますが、単純なメロディを強弱をつけて反復させた音楽がこの映画の恐怖をとても良く表していることを記して終わります。音楽はクリフ・マルティネス。       八点鍾

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IMDb

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