レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

「雨の訪問者」季節外れのリゾートで起こる暴行殺人事件 マルセイユからの男 爪を噛む女 ドブスと名乗る謎の男・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「雨の訪問者」(1970)です。

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IMDb

 

映画は、マルセイユから南東100キロほど離れたリゾート、イェールにバスが到着、一人の男が降りるところから始まります。パラパラと雨が降り続いており、メリー(マルレーヌ・ジョベール)は爪を噛みながらぼんやりと外を眺めている。母と一緒にスロットカーの修理をしている。母はタバコを吸い、時々酒を飲みながら仕事を行っている。

メリーは母に尋ねる。

「どうしてそんなに飲むの?」

「忘れるためよ。男が卑劣なことを」

 と言う導入部に嵌るか嵌らないかでこの映画の評価が決まると言って良いと思います。母のセリフ等、私から見るとたまらない導入部です。

 

男はメリーの家に侵入し、メリーを暴行するが、彼女はショットガンを持ち出し、男を射殺する。彼女は、車に死体を載せ、海に捨て証拠を隠滅する。

翌日、友人の結婚式、その式場でドブスと名乗る男(チャールズ・ブロンソン)が、彼女に尋ねる。

「どうして殺したのか?」

このように少しづつ謎を小出しにして観客を引っ張って行く演出も的を得ている。

 

時々、トラウマの様に母が不貞を働いていた現場を見たことを思い出す。その結果、父は失踪し、家族は崩壊した。彼女が子供の様な表情を見せるのはその為かもしれなかった。

 

ドブスは、メリーの夫がパイロットで留守がちなのを幸いに彼女に家に上がり込んで執拗に色々と尋ねる。

男をどうした? 殺したんだろ? 男が持っていたカバンは? 酒を飲ませて酩酊状態にしたり、胡桃をガラスに投げつけ、ガラスが割れたら、君は俺のことが好きなんだとか訳の分からないこと言う。

 

ある時は、ルガー拳銃P-08を突き付けて回答を迫るが、彼女は動じなかった。

やがて、彼女の車の中に男のカバン、TWAの飛行バッグを見つけ、彼女は思い立ったように動く始めるのだが・・・

 

 情緒不安定のメリーが子供のまま大きくなり、周りの世界が不思議な国の様で、色々な思っても見ないことが起こり辛いことばかり、何とか解決しようとするが右往左往するばかり。どんどん、悪い方向に進むんだが、最後は落ち着くところに落ち着いてすべて解決。ミステリーとして大変上手く纏まっています。

 

セバスチャン・ジャプリゾの小説を映画化したこの作品、巨匠ルネ・クレマン監督後期の名作と言って良いでしょう。特に、「さらば友よ」でブレークしたチヤールズ・ブロンソン主演作の中でこの作品と「ウェスタン」がベストと言って良いでしょう。それくらい良く出来た作品だと思います。こういう珠玉の名作が出て来るので、映画が好きを辞めることが出来ません。

 

マルレーヌ・ジョベールは、「007/カジノロワイヤル」で有名な女優エヴァ・グリーンの母親です。どことなくよく似ています。

メリーの友人ニコール役のジル・アイアランドはブロンソンの妻。

ドブスと言う名はジョン・ヒューストン監督「黄金」でのボガートの役名、時々映画でてきます。例えば、「ガルシアの首」でロバート・ウェバー扮する殺し屋がドブスと名乗るシーンがあります。この作品は、多分クレマン監督の洒落たユーモアでしょう。

 

このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。        八点鍾

 

追記

この時期、ミニスカート全盛時代。マルレーヌ・ジョベールの白のミニがやたら眩しかったことを告白します。

 

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