レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

「涙するまで、生きる」カミュ著「客」を映画化した作品ですが…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「涙するまで、生きる」(2014)です。

1954年冬。アルジェリアがきな臭く成った頃、数年前に妻を亡くしたダリュ(ヴィゴ・モーンセン)は山間部の小学校で教師をしていた。そこにアルジェリア人殺人犯モハメドを連れた憲兵が現れ、隣町まで護送することを頼まれる。ダリュは断るのだが、頼み込まれ仕方なくモハメドと旅立ったのだった…

カミュ著「客」を映画化した作品です。監督・脚本はダビド・ホールホッフェン、手堅く纏めています。映画の最大の美点は、アルジェリア山間部の厳しい風景でしょう。本当に美しいです。人が生活するには厳しい場所ですが、その美しさといった息を吞むほどです。ヴィゴ・モーンテンセンの渋い演技もとても良いと思います。

但し、この映画を見る前にバンデデシネ版「客」を見ていたので、この映画かなり原作から乖離が甚だしく、又良いエピソードを挿入していればマルですが、ALN(アルジェリア解放戦線)に拘束されたり、フランス軍に助け出されたり、加えて鉱山町で色々と遊んだりとありきたりなので、私は少し失望しました。

原作はそんなエピソードは無く、ダリュがモハメドと共に隣町へ行くのだが途中で好きにしろと言わんばかりにほっぽり出して小学校に戻る。教室の黒板に"俺達に何故渡さなかった。このことは忘れないぞ"とフランス語で書き殴ってあり、そこで終わるというもの。映画にはこのシーンはありませんでした。前述した様に、ラストシーンがないと気の抜けたビールの様で…

こんな感じなので、カミュが大好きな方にはちょっとね、そうではなく、アルジェリア山岳地区の厳しい自然を堪能したい方には良い映画だと思います。興味を持たれた方は是非ご鑑賞ください。

でも、怒られるかもしれませんがマーク・ロブソン監督「名誉と栄光の為でなく」よりいい映画だと思います。

このブログ作成にVOD(アマゾンプライム)にて鑑賞しています。                 八点鐘

 

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追記 暴力革命で政権奪取するのは良いですが、その政権には経済通の人材がいないと国民が大変です。ただただ政権奪取したいだけのあれば、一番被害を被るのは国民だと思います。次は国民のお腹を満たしてやらないと。

例えば、私が一時期仕事をしていたベトナムでも政権奪取後、経済通の人材がいなくて大変だったと聞いています。サイゴン陥落の少し前までTVを製造していた松下電器は、工場を閉鎖して日本へ帰りました。が、1993年頃松下本社へベトナムから手紙が届き、差出人は昔松下工場で働いていた現地支配人からでした。吃驚したそうです。

松下側も工場を再開したい事もあり、責任者をホーチミン空港へ送り出し、二人は感動の再会だったそうです。国側も工場用地その他を準備していた様で、上手く工場生産が進んだと聞きました。この手のプロジェクトが一つ上手くいくと我も我も続くんですね。こういうことが理解できない人がトップにいると政権奪取後の国民は大変でね…