レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ロード・トゥ・パーディション」(2002)です。
ニコール・キッドマンの舞台「ブルールーム」で名を上げたサム・メンデス監督「アメリカン・ビューティー」には参りました。アメリカ社会の痛烈な風刺作品で、私には、楽しい映画ではありませんでした。
そう、英国人の監督、時々米国に対してこういう意地の悪い作品を作るのですね、例えば、「真夜中のカーボーイ」とか未見ですが「ラブドワン」等。
既に英国で映画製作をしていたキューブリックの「博士の異常な愛情」も見方を変えると米国の防衛政策の辛辣な批判です。
映画は、アイリッシュマフィアの殺し屋サリヴァン(トム・ハンクス)は、マフィアのボス、ジョン(ポール・ニューマン)とその息子コナー(ダニエル・クレイグ)の確執から妻と次男を失い、長男を連れてコナーとジョニーに対する復讐の旅に出る。ジョンはネジの外れた殺し屋マクガイア(ジュード・ロー)を雇い、サリヴァンを亡き者にしようとするが・・・
この作品、日本の劇画「子連れ狼」を参考にマックス・アラン・コリンズが創作したグラフィックノベルを映画化したこのフィルムノワールは、硬質な映像、非情な描写、素晴らしいキャスティングに支えられて大変素晴らしい作品になっています。
但し、この作品後述しますが、役者の演技より、その撮影技術、演出のセンスの良さで作られている作品と言って良いでしょう。
ノワール作品なので冒頭のワンショットとラストのシーン以外は、雪、雨、曇天、夜のみと徹底しいます。そういう雰囲気もとても作品にプラスになっています。
特に、黒澤明風どしゃ降りの中でのジョニーとの対決は、極力彩色を排してモノクロ画面の様に撮影され、加えてどしゃ降りの音だけ効果音として使用しての演出は、監督のセンスの良さに驚くばかりです。撮影はコンラッド・ホール、この作品でアカデミー撮影賞を得ています。
大変良く出来たノワールスリラーの教科書的作品と言って良いと思います。
このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。 八点鍾