レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「存在の耐えられない軽さ」(1988)です。
映画は、1968年8月頃のチェコスロバキア、プラハから始まります。トマシュ(ダニエル・デイ・ルイス)は、とても有能な脳外科医だが女性好き、素敵な女性に会うたびに「服を脱いでくれない?」と持ち掛ける。
ある時、愛車スコダ100に乗って、チェコの温泉地に手術に出掛けテレーザ(ジュリエット・ビノシュ)と知り合う。彼女はプラハに来てトマシュと同棲を始める。トマシュにはもう一人女性がいて、サビーナ(レナ・オリン)という。彼女は芸術家で一番トマシュのことを理解していた。
この三人がプラハで生活し始めた頃、ソ連軍によるチェコスロバキア侵攻が始まった。ソ連軍に抵抗するトマシュとテレーザ、サビーナは現実に絶望してスイスに逃げてしまう。
やがて、トマシュとテレーザもスイスに逃げるが、スイスの平和の中で相変わらずの軽い人生を送っているトマシュに絶望したテレーザは、それに耐えれないと手紙を書いてチェコに戻ってしまう。トマシュも戻るが、以前の様に戻れない。
官警の圧力で彼は医療関係の仕事に就くことが出来なくなり、トマシュとテレーザは片田舎に引き籠ってしまうのだが…
作家ミラン・クンデラの同名の小説を傑作「ライトスタッフ」(1984)のフィリップ・カウフマンが映画化した。上映時間約3時間の力作で、この題名からコテコテの映画をイメージされる方も多いかと思いますが、意外と軽く、コメディタッチで作られているのが救いです。私は原作を読んでいませんが、原作もこんなに軽いとも思えません。他のレビューを読むとラストが明るすぎるなどと書かれているので。
カウフマン監督って凄いと思います。前作はテストパイロット、アストロノーツの映画で、この作品はチェコスロバキアのプラハの春とソ連軍の侵攻を背景にしたラブロマンス物なんですから。ビックリするほど物凄いセンスの持ち主です。
だから、この映画の見所は、ソ連軍によるプラハ軍事侵攻です。ドキュメンタリタッチで、SFXを多用し当時のニュースリールにトマシュとテレーザを嵌め込んでいるのです。執念じみたものを感じます。マラクティカ(東ドイツのカメラ)、一眼レフを構えるビノシュのカッコイイ姿、うーん美しいです。
ビノシュは初々しい少女から逞しい女性まで演じています。こういう作品は珍しいのでは。出来れば「ライト・スタッフ」に惚れたファンだけではなく、女性映画ファンに鑑賞して欲しい作品です。本当に良い作品です。
ラストはやはり甘いですが映画なので。又、悲劇と言えば悲劇ですが、こういうラストもあるでしょう。少し唐突ですが、私から見れば、二人はとても幸せだと思います。
このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。 八点鍾
追記 この作品を見て、暫くたってから仕事でチェコへ行きました。とても良い所です。田舎はこんな感じでビールが本当においしかった。
リタイヤしたら、こういうところでのんびり過ごすといいなと思いましたが、帰国したらドイツ国境にあるチェコの古い原発、とても危ない代物でなんてニュースでやっていて、何も知らずに行くととんでもない目に遭うことは間違いないと思います。
概ねすべてのスコアがのっています。ただし、聞きづらい場合は、
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